アウディ・クアトロの悲劇 その3 (MTB設計編)

前回から続く)

ストリートライディング向けのMTBフレーム、「Tanatos(タナトス)」の設計をしている時に、色々な他社のフレームも買ったり借りたりして乗ってみました。設計のポイントとして、特に「前を上げやすい」という性格は欠かせません。前輪を上げて走るウィリーやマニュアルという技は楽しく、他の技への発展性も豊かなのですが、フレームの設計によっては例えば身長が180cmないと物理的に不可能になってしまうからです。その中で、ひとつの衝撃だったのが某有名ブランドのアルミフレーム。「女性用」を前面に出した、コンパクトかつ軽量なMTBです。

最初の衝撃は、少しでもハンドルを切ると足先が前輪に当たってしまうということでした。これはちょっと問題です。一般的に言って、ハンドルを切ったらタイアが何かに当たる乗り物というのは設計上あり得ません。そして次に気づいたのが、前輪が上がらないという更に致命的な事実でした。

調べてみると、このブランドは伝統的にリアセンター長が425mmとなっています。420mmというメーカーも多いですから、これはやや長めとも言えます。とはいえ世間には、リアセンターがそのくらいあっても前輪をなんとか上げられて、「長いから安定する」という性格を実現しているフレームもあります。この場合には、乗りにくい原因の一番は前後バランスの悪さなのでした。「コンパクト」を目指すなら、前後の長さなどのバランスを保ったままでなければ意味がありません。このブランドには良いストリートライダーもいるのですが、それは180cmを超える身長とリーチの長さがあるので、大きいサイズの(425mmのバックエンドとバランスが取れた)フレームに乗れているからです。

マニュアル時のバランスというのは、今まで聞いた中でベストな例えで言うと、サーフボードに乗って先端をつかみ、前を浮かせるようなものです。その時、板の前の方に乗っていたらできないでしょう。リアセンターが長いというのは、そういうことです。そして、板の先端をいくら切り詰めても意味がないこともまたイメージできるでしょう。乗り物としての性能が落ちるだけです。アウディ・クアトロが20年前に似た間違いを犯したように。

体格の大きくない人(身長140-170cmとか)で、MTBでアクションライディングをしたいという向きには、とにかく一度リアセンターの短いフレームに乗ることをおすすめします。友達が貸してくれなければ、タナトスの無料試乗車もありますよ。「とにかく前を上げやすいセットアップ」などの指定にも対応可能です。あなたは、その体格と、その情熱に見合った自転車に乗っていますか?

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