残念な雑誌の話

自転車雑誌界は、どうやら群雄割拠の戦国時代を迎えているようです。写真のクオリティに定評のあったMTB MAGAZINEや、孤高の専門誌として頼りにされていたBMX FREEDOMが休刊となったのは記憶に新しいですが、一方で新しく創刊された自転車雑誌があったので、本屋さんで眺めてみました。

業界の真の発展と、ライダーへの責任ある情報提供のために、実名で。「CYCLING CLUB」という雑誌です。現在発売されている号に関しては、私の評価は残念ながらABCDのうちのFです。ざっと見ただけですが、問題が多すぎます。

まず、自転車についての基本的な知識不足。フリースタイルMTBのライダーと街頭で出会ったという挿話がありましたが、写真を見る限りBMXのフラットランドです。フリースタイルという用語自体、その中でのジャンル細分化が進んだ現在ではあまり使われませんが、それ以前に…。確かに、BMX(バイシクルモトクロス)とMTB(マウンテンバイク)とBTR(バイクトライアル)は昔から道行くおじさんにはごっちゃに理解されています。それは、地方の温泉に行くと「おう兄ちゃん何かスポーツやってるのか?」と聞かれて、「自転車やってるんですよ」と答えれば「そうかそうか、何級だ?」という話になってしまうのと一緒です(ちなみにこの場合は、「A級っす。なかなかS級には上がれなくて。今度の函館はバッチリ逃げますよ」というのが模範解答らしいです)。でもまさか、業界内でそんな事態になるとは。

次に気付いたのですが、雑誌作りという面でもプロの仕事とは思えない部分があるんですよね。最大の問題は写真クオリティの低さ。 印刷物は通常、300-350 dpi(ドット・パー・インチ)くらいの解像度で写真を載せます。つまり、縦横とも300ピクセルの写真があれば、それを1インチ(2.54センチ)四方くらいの大きさで使うということです。それ以上は引き伸ばせません。コンピュータの画面では72-96 dpi が普通ですから、印刷物は精細で見やすい分アラが目立ち、大きく使う写真は高解像度でなければならないということなのです。ところが、この雑誌は写真によっては100 dpi あるかどうか、というものを掲載している始末。モザイクですか?

とどめの衝撃は、日本語力の不足。流行のピストバイク(トラックレーサー)の特集がありましたが、その減速方法について、「ペダルを逆回転させる」という記述がありました。確かに、昔から「バックを踏む」という言い方があります。そして、ペダルに逆回転方向の加速度を与えるというのは事実です。 でも、実際にペダルの運動方向が逆回転にはならないでしょう。どんだけドリフトしてるんですか。神岡ターンですか(車のラリーで、実際にバックギアを使うコーナリングテクニックがありました)。バックを踏む=逆回転、という脳内変換に歯止めが効かないのであれば、それはピストに乗ったことがないばかりか見たことさえないということなのでしょう。

対象ジャンルを絞りすぎたために、大きなマーケットを作れずに失敗した雑誌はいくつも見ました。自転車でも、自動車でも、スキーでも。それでも、そうしたプロジェクトに関わった人たちは、その世界を愛する本物のプロフェッショナルであり、純粋な参加者でした。そういう人たちをこそ、私は応援したいと思っています。

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