栗城くん、さようなら

「登山家」栗城史多が亡くなったということで、以前に書いた彼にまつわるエピソードに沢山アクセス頂いていました。

私にとっての彼の印象はあの5年前の時点から特に変わっておらず、「日本初の本格派山岳詐欺師」といったところです。ちなみに世界レベルで言うと、とりわけ単独行者の世界では登頂の証明が困難であるという要素もあり、トモ・チェセンのように疑惑にまみれた登山家は他にも存在します。そんなチェセンも本来の実力は非凡なものがあったそうですから、類似のケースとは言えませんが。

一連の活動の中で栗城くんがなぜ年々自分からハードルを上げて必ず死ぬようなルート設定をするのかということは一つの謎だったのですが、ネットで見た「大学受験を毎年続けていて、ただでさえ高望みの志望校が浪人年数を重ねるごとに更にランクアップしてしまう」という例えがしっくりきました。ただ違うのは、なんぼ東大理三でも毎年必ず100人ほどは合格するっていう点でしょうか。大学の例えをもうちょっと引っ張るとすれば、栗城くんの掲げていた挑戦は「小学校を出た瞬間に飛び級してハーバードに入る」くらいのレベルです。有史以来ずっと、体力自慢、頭脳自慢、装備自慢、資金力自慢、そしてそれらのあらゆる組み合わせを持つ人々が挑戦してきて、成功した人が一人二人いるかどうか、という領域なのですから。

死者に鞭打つのも虚しいですし、栗城くんの嘘や欺瞞については私が外野からこれ以上言い募っても仕方がありません。しかし一方で、彼を持ち上げていた人たちやメディアはきちんと事実に基づく総括をしてほしいなとも思います。マイナースポーツに偽りの偶像を持ち込んでかき回し、後は野となれ山となれというのではあんまりです。

5年前、「彼に落とすお金は死に銭だよ」なんて、私もずいぶん上から目線で知人に言い放ったもんです。しかし、結局彼へのそうした「サポート」が彼の六文銭になってしまいました。残念なことです。

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日出ずる国にITが沈む日

月初にちょっと東京に行って、ショックを受けたことがあります。

日本のIT(情報技術)はもうダメかもしれない。

そう考える発端はこれまでにも山ほどあったのですが、今回は特に自転車がらみの切り口から。たまたま目にしたNewsweek日本版の記事です。

東京のシェア自転車は役に立ちますか?

また、その前段となる記事も過去に読んでいました。

自転車シェアリングが中国で成功し、日本で失敗する理由

2本まとめて超要約すると、こんな感じです。

  • 自転車シェアリングが中国あたりで爆発的に普及中
  • 問題もあるが、それ以上に社会革命と言えるほどの成功を収めている
  • 日本も追随しているが全然ダメ、なぜなら
  • 理由1:交通インフラの都合上、必要性も利点も薄い
  • 理由2:システム設計がアホだから使いづらい

これらの記事に対する反応は賛否両論あるようですが、私はほぼ全面的に賛同します。きちんと現地で利用した体験に基づいていること、根拠となるデータの明示、社会学的考察の包括性、などの点でとてもしっかりと書かれた記事だと思いますし。

私は2014年に台湾・台北で同様のシェアバイクを利用し、2017年に中国・上海で街角のシェアバイクを横目で観察し、今年2018年になって東京のシェアバイクに乗ろうとして諦めました。そんな些末な体験を元に、日本のIT業界をディスって憂さ晴らしでもしようというのが今日のテーマです。

ちなみに、こうしたバイクシェアリングでは身元認証のために携帯電話を使うのが標準的であり、東京のプログラムでドコモ系の会社が運営主体となっているのもおそらくそういう絡みです。

で、日本のIT業界では巨人であるはずのドコモが牽引するこのプログラムがどれほど使いづらいのかは引用記事にある通りですが、私は実はそこに至る前に落伍しました。登録画面でどのように操作したら良いのかは公式チュートリアルを見て確認したのですが、そこに出てくるサンプル画面と実際の画面が微妙に違っていて混乱したというのが第一のつまずきでした。さらに、そんな状況で支払い方法とか間違って登録したら困るので、携帯電話と紐付けされる登録IDを一旦削除してやり直したら「既に登録されている番号です」と出てにっちもさっちも行かなくなる始末。登録画面のユーザーインタフェースが「はじめてつくったホームページ」みたいなセンスで使いづらいのは100歩譲って許すとしても、バックグラウンドのシステム設計がゴミレベルなのはいただけません。あんたら何屋だったっけ?って話です。

引用記事の中で私が特にツボったのが、この考察です。

どうもドコモのおじさんたちは、日本人は携帯電話やスマホをプチプチ押すのが好きだ、押す回数が多ければ多いほどみんな喜ぶという前提でこの仕組みを設計したとしか思えない。その結果、モバイクなら5秒程度で完了する手続きがドコモだと1分以上かかってしまう。

これって実はシェアバイクだけに当てはまる話ではないと思うんです。オンラインバンキングでも、車検でも、会社の事務処理でも、日常色々なシーンで似たようなことがチラチラと起きている気がします。

私だって「ひと手間かける」という美徳には共感します。例えば、たまに手書きの年賀状をもらったら嬉しいですし、一から出汁を取った料理は格別です。しかし、それはユーザー側の話。システム側の設計として問答無用で「ひと手間かけさせる」というのは欠陥であり、誰も得をしません。それでも修行僧のような心構えで頑張ってプチプチ押してくれる人は一定数いるわけですが、そういうマーケット特性に甘えている間にスマートなインタフェースを持つ黒船がやってきてガラケーとiモードがまとめてお焚き上げされてしまった過去からドコモは一体何を学んだのでしょうか?

冬道の安全/危険運転考 – 2

だいぶ間が空いてしまいましたが、最近話題のカーリングの聖地、北見市常呂に向かう総延長300kmのスケートリンク道路で鬼渋滞に巻き込まれ、スタックしたトレーラートラックを助けてあげることができずに泥縄フックを呪ったところまでが前回のあらすじです。

今回は、自分が事故りそうになってヒヤリハットしたお話をお送りいたします。

安全運転には、能動的安全運転と受動的安全運転があると私は考えていて、両者はかなり性格を異にするものです。能動的安全運転としては、まず車の操作がきちんと上手にできることが重要で、人間が車を運転する限りにおいては不可欠のものです。しかしこれを変にこじらせると、「俺は上手いから事故らないぜ」とか言いながら公道を数百km/hでぶっ飛ばす方向になってしまうので注意が必要です。一方、受動的安全運転としてはまずスピードを出さない、危なそうなことはしない、危なそうなものには近づかない、というあたりが重要ですが、これまたこじらせると大変でして、成田山の交通安全お守りステッカーをペタペタ貼った車で制限60km/hの道を40km/hで走り続け、途中で物理的限界速度40km/hの凍ったコーナーがあってもそのまま突っ込んでいくようなただの鈍感運転になるケースもあるわけです。

危険運転も同様で、率先してアクティブに危険なことをしているパターンと、そんな反社会性人格障害でもないのに結果としてパッシブな危険運転をしているケースとがあります。よく話題になるのは当然目立つ前者の方で、これは本当にやっちゃダメです。他の車が気に食わないからって煽ったりぶつけたり爆撃したりしてはいけません。しかしまた一方で、受動的な危険運転というのも大問題で、というか私はこれ嫌いです。本人に悪気が無い分かえって面倒だからです。

例を挙げましょう。ある夜、田舎国道を走る私の前に、対向車とすれ違うたびにブレーキを踏む車がいました。きっちり毎回必ずです。この時ほど追い越し禁止を恨んだことはありません。複数の車が道路をシェアするということはペアで踊るダンスなんかに似ていて、次にどういう動作が来るのかパートナーにきちんと伝わらないとギクシャクします。どっちに動くのか、右にスピンするのか左なのか、なんてことを必然性を持った動作によって伝えるのはリードする側の義務です。そのために車にもウィンカーやブレーキランプがあるわけで、それらの誤用は危険を招きます。すれ違いブレーキさんについて言えば、「シカが飛び出してきた」あるいは「道がそこで終わってた」なんて可能性のあるシグナルをものすごい頻度で受け取って、わたしゃ大層疲れたわけです。もちろん途中からはそういう運転だと分かりましたが、それはそれで今度は、オオカミ少年の原理により本当に何かがあった時の反応が必ず遅れることになります。

で、ここまで全て前置きだったわけですが、今回というか先月の話に行きましょう。ある夕方、温泉に向かっていると、前の車がいつでもどこでもランダムにブレーキパカパカさんでした。ほんとAT乗りは下手くそさに下限がなくて困るよね、なんて偉そうなことを考えていると、鉄道ガード下で赤信号になりました。この日はずっと凍っていなかった道路も時間的にそろそろ凍結開始といったところです。谷底地形のせいか、滑り止めの砂利が結構溜まっています。その時、前の車、停止線20m手前でフルブレーキングしました。え? うそでしょ? ギャーやめて!

この冬一番の人力ABS、炸裂させました。ギャーとか言いながらもミラー見て隣車線の後続車がいないのは分かっていたので、濡れて凍りかけでジャリジャリの路面でズルズルと断続ブレーキングしつつ向きを変え、スピードを落としつつ隣車線に逃げることができました。一方、ランダムブレーキさんは何もなかったかのようにスルスルと停止線に向けてまた動き出していたのでした。

私のトラックにABSが付いていないのはランダムブレーキさんのせいではないし、もっとガッツリ車間距離を取っていれば多少は余裕があったのも事実です。まあABSは付いていたとしても速度域から考えてあまり差は出なかったでしょうけれど。しかし、例えばラッシュアワーの駅構内で突然歩みを止めれば後ろの人が突っ込んでくるのは当たり前。どちらが悪いという話をしたいわけではなくて、適宜サインを出しながら必然性のある動作を紡いでいかなければ、ダンスは踊れないのです。とりあえず、それなりの技術を磨いておいて良かった。誰も、誰の車も傷つかなくて、本当に良かったです。

皆様も、ご安全に!

冬道の安全/危険運転考

この1月は北海道ではやや雪が少ない方だったという気がしていますが、一方では関東で大雪になったりして、風情を楽しんだ方もあれば、一方では不便を被った方も多いと思います。

雪が降ると必ず起きるのが交通障害でして、特に車を運転する方には大きな問題です(もちろん飛行機を運転するにも汽車を運転するにも大問題ですが、そこは素人とプロの境界をなす大きな壁の向こうなので以下略)。程度の差こそあれ、北海道でも本州でも、世界中のどこでも、雪が降れば事故や渋滞の可能性が大きく上がるのは自然の摂理というもので、私も今月2回ほどそれを実感する機会がありました。そんな統計的にはアホほど偏ったサンプルから、冬道での安全運転と危険運転を適当に考えてみましょう。

1月10日。私は愛しのレッドロケット号で北見に向かっていました。英語キャンプのお手伝いという楽しい仕事のためなのでウキウキだったのですが、道路状況はまさに真逆だったことを、出発時の私は知る由もなかったのです。天候としては晴天がたまに曇天になり雪がパラつく程度でしたが、問題は道路。いや、道路というより、総延長300kmのスケートリンクです。

雪道というのは実際、どうしようもなく運転しづらいものではありません。ちゃんとしたスタッドレスタイヤを履いていて、一応の技術があれば何とかなるものです。特にレッドロケット号は4WDですし、といっても冬でも8割くらいの時間は2駆に切り替えてFR状態で走っていますがLSDも入れてあるし、かえって楽しいくらいのものです。どんな車でも、アクセル一定、ステアリング真っ直ぐで直線を走るなら、100km/hくらいで走っている分にはどれほど摩擦係数の低い路面でも何も起きません。通常は。しかし、当別町の直線で一瞬車が勝手に向きを変えようとしたあたりで認めざるを得ませんでした。年に多分数十日あるかどうかのメチャクチャ滑る日だったわけです。

まあ滑ること自体は構わないのですが、滝川あたりで新たな問題が勃発します。どうもその前後でかなりの降雪があったらしく、高速道路が通行止めとなった影響で、北海道民550万人が全て下道の12号線に降臨したようなのです。夏の終わりの中央道上り線なんかを彷彿とさせるカオスが出現したのでした。

深川を過ぎてさらにカオスが深まり、もうそこら辺でスケート靴買って乗り換えた方が速いんじゃないかと思い始めた頃、その一因が判明しました。

上り坂で動けなくなっているトレーラートラックが1台。砂をまいて何度ももがいてますが全然ダメ。道のど真ん中すぎて後続車もなかなか追い越すに追い越せない状況でした。対向車も直上のカーブの向こうからバンバン下って来ますので。

かわいそうなので、どうにかこうにか追い越してからすぐに路肩に停めて、手助けを申し出てみました。こっちは牽引ロープもシャックルもあるし、4Lギアも付いてるし、そこそこの自重もあるし。運転手さんはまあ普通の頑張ってる若者で、孤立無援だったのでちょっと嬉しそうではありました。しかし問題が一つ。トラクター(トレーラーヘッド)に牽引フックが無い。

そう、最近の車にありがちだとは聞いていた、トラブってからバンパー付近のカバーを外し、慌ててフックをねじ込むタイプだったのです。今時、乗用車だけでなくトラックもそうなっていたとは全然知りませんでした。そして運ちゃんは会社にあてがわれたばかりのトラックなので一生懸命ねじ込みフックを探したり会社の人に電話したりしているんですが、積んでいない様子。この手のもんは他の場所どこにかけても多分絶対壊れそうなんで、これでもう手詰まりです。

そうすると、一通り諦めた運ちゃんはチェーンを巻き始めたのでした。ああそういう手があったんじゃん、ていうか今までひたすらそれを面倒くさがっていたんかい、てことで私はそれ以上手伝えることもなく現場を去りました。

というわけで、もう長くなったので後半の話は後日に回すとして、教訓をひとつ。あなたの車も、ねじ込みフックはなくさないで! ちなみに中古で買ったとかで車に置いてないことに気づいてしまったなら、解体屋で投げ売りしてます。ネジ径は種類があるので気を付けて。

あと、提言をひとつ。もうこれ、泥縄フックって呼ぼうぜ!

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