Spinnerフォーク、実は27.5″ホイール装着可能でした

先日の「うちのフレームにもシマノクランクが付くよ!」というニュースに比べると小粒なネタですが、またまたやって来ました、互換性検証シリーズです。

OSストレートコラムの救世主として仕入れてきた老舗スピナー社のサスペンションフォークですが、26インチだけでなく27.5インチのタイヤも装着可能と判明しました。こんな感じです。

27.5″でそこそこ太めなダウンヒルタイヤ、そこそこ幅広のダウンヒルリム。本当はもっとスキニーなタイヤでそっと試してみようと思っていたのですが、とりあえず手元にこれしかなかったのでドンといきます。いけました。

タイヤとフォークのアーチとのクリアランスが5mm。余裕です。このホイールセットを20世紀のダウンヒルフォークに履かせて、ここのクリアランス1mmなんて状態でDHレースで時々遊んでる私が言うんだから間違いないです。

加えて気にしなければいけないのが、フルバンプ時のクラウンとのクリアランスです。ここがフレンチキスしちゃうと極限の前荷重状態で前輪がメカニカルロックしちゃうのでとっても危ないです。ちょっと擦る程度なら死にゃしないんですが、そこはフレンチ具合によりけりです。とりあえず隙間は101mm。

内部構造とかは置いておいて物理的なトラベル限界としては、まあインナーチューブの出代以上には動かないと考えて、これが100mm。クリア!!!

ちなみにこのフォークは付属品として用意しているトラベル短縮キットを62mm分入れているので100とか101という数値になりますが、この数字自体はセッティングにより変動します。しかし相対的位置関係はそれに依存しませんので、このフォークにこのタイヤであれば、トラベル量設定やエア圧に関わらず、1mmの余裕があることになります。現実のライディングではフルバンプに至ることは非常に稀であり、またフルバンプ位置には一瞬しか留まらないということを考慮すると、この余裕はゼロ以上であれば何でも良いです。昔のサスフォークではちょっと太いタイヤを履いたらフルバンプで擦るのも日常茶飯事でしたから、自転車業界基準としては「だいたいゼロ以上」なら上等ってなもんです。

というわけで、好評発売中のSpinnerフォーク、だいたい27.5 x 2.4″までのタイヤが入ります。

実際には27.5″タイヤという最新規格のMTBであればほとんどが大径ヘッドチューブだと思われますので、そういうバイクにわざわざこのフォークを使う動機は薄いでしょう。しかし一方、O/S直管ヘッドで26″のMTBにこのフォークを入れると、ついでに前輪だけ27.5インチ化して新次元の走破性と取り回しの良さを両立!なんて風にセットアップで遊べる余地が出てきます。また、フレームによっては後輪も実は27.5″が入るものもあるでしょう。

前後異径というコンセプト自体は東京のワークショップ・モンキーが26/24インチで何十年も前に実現させているものでもありますが、ここに来て27.5″規格も絡める形でニッチな流行再来があるのではないかと個人的に予想しています。ま、27.5″であれ26″であれ、試してみるには割と気軽な41,800円のこのフォーク。ぜひご検討下さい。

Tanatosフレーム、実はShimanoクランク装着可能でした

弊社ブランド Libido Bike Co. が誇る旗艦モデルが、究極のストリート用MTBフレームである Tanatos。これについて街頭インタビューをすると、以下のような声が聞かれます。

  1. 「そもそもストリート用ってどういうもの? 私はパンプトラックとダートジャンプとスロープスタイルとスケートパークしか乗らないから興味ない」
  2. 「トップチューブとダウンチューブがトリプルバテッド管だとか、フレーム全体を溶接後熱処理しているからクロモリ鋼本来の強度と靭性が発揮されると言うけど、それでもフレーム重量が2.5kgあるなんて、軽量機材原理主義の我々からすると迫害対象と考えざるを得ない」
  3. 「ああ、例のパーツ選定が面倒くさいフレームでしょ? 特にBBとクランク周り、BMX系の部品を前提に設計されているけど、俺マウンテンバイカーだからそういうの分かんないし」

ごもっとも。では解説しましょう。

  1. ストリートとは文字通り街中の階段を飛び降りたり壁を走ったりするような乗り方です。機材設計の要点や方向性としては、パンプやダートやスロープスタイルやパークとほぼ完全に一致します。ドンズバです。
  2. 設計ミスでした。類似用途のアルミフレーム並みの2kgくらいで仕上げておけば、世間一般のフレームをストリートで乗った場合と同じように、数か月から数年のスパンでみんなフレームを折ってくれて私たちは買い替え需要でウハウハできたはずです。しかしながら、実際に乗ってもらうと「動きが軽い」とのコメントは多くとも「重い」と言った人は皆無です。
  3. そんなあなたに今日のトップニュース。泣く子も黙るシマノ製クランクセットが装着できます。

そう、実はタナトスにも、業界標準を牽引する世界のShimano製MTBクランクが付けられるのです。ということは、同じ24mmスピンドル規格であればRaceFaceその他、工夫次第でもう好きにして下さいってことです。ではさっそく、インストール実証写真をどうぞ。

必要な部品とセットアップの要点は以下の通りです。

  1. BBには、6805系BBベアリング(要はシマノBBのベアリング部分だけに相当するもの)を用意
  2. クランク位置調整に、内径24mmのスペーサーが適宜必要
  3. クランクには、XTやSLXのグレードに用意されている「チェーンライン+3mm仕様(2×11スピード)」、いわゆるBoost対応モデルを使う
  4. フロントスプロケットは、インナー24Tや26Tをそのまま使う
  5. リアスプロケットは、11T~12Tあたりを目安に、お好みでどうぞ

細かいところを順番に見ていきましょう。

1番、BBベアリング。

BBベアリングについては、シマノBBから打ち抜いて使うという裏技も無くはないですが、それより、アフターマーケットで同じベアリングと内径スリーブのセットがナンボでも売られています。それを買ってくるのが良いでしょう。何が合うのか分からなければ、魔法の呪文「トレックのBB90用」と唱えましょう。

右側のものが、今回ゲットした内径24mmスリーブ入りベアリング。

樹脂スリーブのツバ部分がベアリングより大きい仕様だったので、チョキチョキと切ります。ベアリング外径マイナスアルファにさえなれば何でも良いです。軽くラビリンスシールを構成する設計でしょうが、これはオマケ。決定的なシール効果はベアリング本体側で完結しています。

なので、ここまで入念なトリミングは不要です。今回はせっかくのデモ組みなので気合い入れてみただけです。あとは普通に圧入して終わり。BMX系BBと違い、左右ベアリング間に金属スリーブ入れなくて良いので楽ですね。

2番、スペーサー。

内径24mmのスペーサーも左右それぞれ適宜必要になりますが、これまたShimano純正だろうと社外だろうとナンボでも売ってます。BB買ったら付いてくる場合もあります。合計10mm分くらい必要です。器用な方なら、内径24mmのパイプを切るなり、旋盤で削り出すなり、または15/16インチ(23.8125mm)のワッシャーだって多分入るでしょう。15/16″なんて半端に聞こえるかも知れませんが、BMXのスプロケット中心穴はほとんどこれだし、32スカイラインとか、スポーツカーのブレーキマスターシリンダー径としても多いサイズみたいですよ。まあ関係ないけど。

Boost対応クランク、非対応クランクと、色々試したのでメモ書きがぐちゃぐちゃですが、最終的に現車に入れたスペーサーは右7mm、左2.5mm。個体差によりコンマ単位では前後しますが、これくらいでスプロケットとフレームのクリアランスも確保でき、チェーンラインも合い、左右のQファクターも均等で、左クランクとスピンドルのかかり代もほぼ最大です。ここから数mm分、スペーサーを足したきゃ足せることになります。

26Tでこのクリアランス。フレームや部品は多少なりとも走行中に撓むのですから、この部分であれば、最低1mm程度の隙間が必要です。現状たしか1.2mmくらいです。

チェーンラインは実測で約49mm。リアハブ側の50mmとほぼ一致しています。すごく大雑把に解説しますと、この差が3mmとか5mmになると(チェーンやスプロケットにもよりますが)問題が発生することもあります。別に10mmとかズレたまま乗ってる人もいるし、一瞬で壊れるわけじゃないですが。ここで1mmというのは、自転車工学的に言って、ゼロの誤差範囲内です。

次に3番。メインディッシュのクランクセットです。

型番に「B」が付くのが今日のラッキーレター。世界のShimanoがLi”B”ido Bikeのために開発した、そんな意味のBです。

クランクはこのBoost仕様でないと、スプロケットとフレームが干渉するので不可です。仮にスペーサー増し増しでごまかしても、今度は左クランクのかかり代が足りなくなるのが見え見えです。ここは素直に、”B”の恩恵を享受しましょう。

はい、以上です。

誤解があると厭なのでクドめに書きましたが、プロショップのメカニックなら拍子抜けする程度の作業内容で、Shimanoクランクがすんなり装着できました。

~以下蛇足~

とりあえず付きさえすれば良い、という黒魔術的アプローチに必要なのはここまでです。何故そうなるのか、仕組みや応用まで知っておきたいという方向けに、役立つかもしれない詳細情報を以下に付記しておきます。

肝となるのが、BB規格とベアリングの互換性です。

まず前提となる知識として、工業用ベアリングは、メトリック(メートル法)系列とインペリアル(インチ)系列それぞれについて、内径や外径のサイズ設定を絞り込むことで規格化・標準化されています。自転車用など、アプリケーションに特化した規格モノについては内径だけ普通より大きくしたり小さくしたりという一捻りもよくあるのですが、それでもほとんどの場合、何らかの標準規格サイズを元にしたものです。そんな標準的外径設定の一つに37mmというものがあり、タナトスに採用している「スパニッシュ規格」BBベアリングも、シマノのホローテック2などに使われるベアリングも、内径は違えど外径は同じ37mmです。

今度はそれを受ける側、フレームのBB規格について。実は最近知ったのですが、タナトスのために私が設計したBBシェルは、Trek社の「BB90」規格とよく似ています。

そもそもBB90とは何ぞや、ということになると、ネジ切りBBシェル+アウトボードベアリングカップを一つのシェル形状にまとめたものと言えます。歴史のお勉強ですが、昔は68/73mm幅のネジ切りシェルにバラ玉ベアリングを内蔵するのが普通でした。しかしBB剛性を上げるために細いスクエアテーパーを捨て、ぶっとい中空BBスピンドルを使用するにあたり、居場所のなくなったベアリングをシマノは最終的にシェル外(アウトボード)に配置しました。ホローテック2時代の到来です。ベアリング配置に着目すれば、圧入カップかねじ込みカップかの違いはあれど、昔ながらのヘッドセットに近い構造です。で、今度は「じゃあヘッドセットの進化と同じようにその外付けベアリングの受け部分までをフレームの形状に含めてやれば良いじゃん」という自然な発想があったとして、それを図面に落とし込むと、大体ぴったりBB90の寸法になります。

そのBB90とタナトスの「Spanish+」を比べると、シェル幅90mm、圧入ベアリング径37mm、というところまで一緒で、圧入深さが違うだけです。BB90ではベアリング規格で言うと6805番を使うのでその幅は7mm、タナトスでは6904番を元にしたスパニッシュ規格ベアリングなので幅9mm。確かBB90ではツライチの圧入、対してうちはツライチではなく10mm奥まで入れ(ツラから1mm引っ込め)ます。ということは、うちのシェルに6805を圧入すると、BB90とのツラの差は片側3mmということになります。ここまで来ればお膳立てはもうバッチリってなもので、スペーサーで隙間を埋めるだけのウキウキ消化試合というわけです。

実は、この逆のケースとして、シマノのアウトボードBBカップに6904系ベアリングをブチ込んでBMXのクランクセットを使うという「シマニッシュBB」なんて裏技もあります。いずれの場合も成否を握るのはチェーンラインやQファクターを正常値に収めるための部品選定です。シマニッシュであればBBスピンドルの長さが重要な要件になるでしょうし、今回のケースではフロントスプロケットとフレームの干渉が最大の関門でした。Boost対応クランクの登場によりやっと突破口が開けたということです。色々な方から頂いた要望やヒントのおかげでそれに気付くことができ、今回の実証実験につながりました。ありがとうございました。

なお、このセットアップのために必要な部品、例えばBBベアリングなどは、弊社で在庫しているものではありません。ですが、どうしても手配が困難であるというような場合にはご相談に乗れるものもございます。ご遠慮なくお問い合わせ下さい。

それでは皆さん、良い圧入を!

あおり運転の真因に関する考察

私たちの生活をマクロ的に見た時、人体における血管に例えられるほど重要なのが道路。その道路交通に関して、ここ1年少々よく話題に上るのが「あおり運転」の問題です。その原因について、ひとつめっちゃ新しい発見をした気がするので徒然なるままに書き記すとしましょう。長くて読んでられないよ、って方は最後の段落まで飛ばしましょう。

まず大前提として、あおり運転の原因の帰属としては、煽る側にも煽られる側にもありえます。もちろんこれはケース・バイ・ケースで、一般に煽る側が悪いのか煽られる側が悪いのかという極度に単純化された宗教論争を私はしたいわけではありません。

さらに言えば、完全に煽る側が悪いようなケースについては、対策は無理です。なぜなら、時々発生する頭のおかしい人をコントロールするのは社会運営において根本的に不可能だからです。もしもそれが可能なら警察も刑務所もいらないって話です。運悪くそういう輩に煽られてしまった場合の対処としては、そこここに情報ありますが、超まとめると「相手の土俵に乗らない」ことが肝要です。「世の中には本当に話の通じないキチガイもいるんだから『話せば分かる』なんてのはあんたの世界における金言であっても相手にはクソほどの価値もない戯言」という意識を持つことはグローバル時代のスタンダードです。というか、我々はそれを1932年から知っていたはずです。

ということで、原因を考察したり対策を論じる価値が大きいのは、煽られる側に問題があるケースということになります。これもゼロか百かということではなく、1%でも99%でも、そこに何らかの要因があるなら改善の余地があるよね、という話です。

で、これなんですけど、実際に問題ありすぎるんですよね。本質の伴わない安全寄り運転の皮を被った、受動的危険運転、自己陶酔型安全のつもり運転、そして結果として起こる煽り誘発型運転。

ラッシュアワーの鉄道駅構内で突然歩みを止めたりジグザグに歩いたり、早足と牛歩を繰り返したりすれば、後ろの人がぶつかってくることもあれば舌打ちをされることもあるでしょう。それを全部「煽られた!怖い!暴力的!」と糾弾することが前向きな提言だとは私には思えません。まして、車の運転というのは他者に対する潜在的加害性が大きいために免許制となっています。というのも、イザというときには、あなたや周りの大事な人たちや第三者を守る手立てとして、あなたの運転技術しか無いからです。自動運転の完全実用化までは、という但し書きは付くとしても、ここを抜きにしては議論が成り立ちません。

話しついでに最後の脱線ですが、最近は本当に下手なドライバーが多いです。ちなみに、運転が下手というと「女性は」とか「高齢者は」とか枠を決めて魔女狩りしたがる人もいるようですが、私の見る限りでは全部です。老若男女、全部。原因は多岐にわたります。交通社会運営におけるゆとり教育的汚点たるAT限定免許、生活の全てのシーンでテレビ放送や音楽を流して隙間を埋めようという足し算的文化志向、あなたを社会のグリッドに縛り付けるソーシャルメディアとその媒介点たる携帯端末、ヘッドライトを点灯しなくてもメーターはピカピカに可視化してくれる計器パネル。責任転嫁の対象は多岐にわたりますが、いずれにしても最終責任が誰にあるのかは知っておくべきです。

さて、ここでようやく本論に参ります。おせえよ。すみません。

煽り誘発型運転の典型例に、「遅い」ってのがあります。そりゃイライラしますよね。通勤電車は早ければ早いほど良いように、インフラストラクチャとして交通を考えた際、時短は絶対的正義です。ですが皆300km/hで運転すると曲がり角ごとにアイルトン・セナになってしまうので、制限速度が設けられています。高速道路でも一般道でも区間によって指定速度が違うことからわかるように、「そこそこヘタでもイケる」くらいの指定が普通です。

けど、この速度さえ出てない車も多いんですよ。だって自車の速度を分かっていないんだもん。

車のスピードメーターは、精度的にはゴミクズレベルです。知ってました?

計器というものには、程度の差はあれ、必ず誤差があります。温度計でも電圧計でも時計でも、高いものでも安いものでも、何でも。そして一般には実際の値から上下に何%以内のズレで収まるように、という形で品質保証をする場合が多いと言えます。しかし、自動車の速度計については、表示値よりもスピードがやたらと出てしまっていると危険です。そこで市販車においては、実速度に対しメーターが過少申告しちゃう側については誤差範囲を厳しく小さく定めるのが一般的です。ここまでは、日本だけでなくヨーロッパでもアメリカでも同じ傾向です。

この狙い所の定め方について、日本では平成19年(2007年)を境に、それ以前と以後の生産車に対して基準値が変わりました。その詳細はどうでもいいという方は以下の数字セクションを読み飛ばして下さい。

国土交通省の定める保安基準の変化は以下の通り。

  • 速度計表示(~H18):10 (V1 – 6) / 11 ≤ V2 ≤ (100 / 90) V1
  • 速度計表示(H19~):10 (V1 – 6) / 11 ≤ V2 ≤ (100 / 94) V1

*この場合において、V1は、自動車に備える速度計の指示速度(単位 km/h)V2は、速度計試験機を用いて計測した速度(単位 km/h)

車検でテストするメーター40キロ読み時点で言うと、実速は

  • 実速度@40km/h読み(~H18):30.91 ~ 44.44 km/h
  • 実速度@40km/h読み(H19~):30.91 ~ 42.55 km/h

となります。

しかしここには一度混乱があり、どうやら2003年時点でのリリースでは以下のようになっていました。このへんの国交省文書を掘り出して時系列に沿って読み解くのに大変手間がかかりました(愚痴)。

  • 速度計表示(H19~):10 (V1 – 6) / 11 ≤ V2 ≤ V1
  • 実速度@40km/h読み(H19~):30.91 ~ 40.00 km/h

(以上、一部改正される前の新基準値、つまりボツ案?)

一方で、道路運送車両の保安基準については、2007年リリースのこんな文書もあります。

(速度計)第五十四条 平成十八年十二月三十一日以前に製作された自動車については、保安基準第四十六条第一項並びに細目告示第七十条、第百四十八条及び第二百二十六条の規定にかかわらず、速度計は、次の基準に適合する構造とすることができる。一 速度計は、運転者が容易に走行時における速度を確認できるものであること。二 速度計の指度の誤差は、平坦な舗装路面で速度三十五キロメートル毎時以上(最高速度が三十五キロメートル毎時未満の自動車にあっては、その最高速度)において、正十五パーセント、負十パーセント以下であること。

これを数式にすると、こうなるでしょう。V1とV2どっちを基準にするかって点で逆じゃねぇか、面倒くせぇな。

  • 速度計表示(~H18):(90 / 100) V2 ≤ V1 ≤ (115 / 100) V2
    (V1は速度計の指示速度、V2は実速度)
  • 実速度@40km/h読み(~H18):34.78 ~ 44.44 km/h

(結局のところこれが、古い車に適用される、昔ながらの値)

正直もう何がなんだか分からないですが、誤差の範囲をどの辺に持ってくるのかという点に注目すると、この基準改正には3段階の変化があったことになります。

  1. 昔の車は、メーター読みよりスピード出るのは多少OK、読みより遅いのはもちろん余裕でOK
  2. これからは、メーター読みより実速度が出ちゃうのは一切許さん。けど、遅い方はもっとガバガバ精度でOKにしてあげる
  3. ごめん、さっきの嘘。少しだけならメーター読みより実速度の方が速くなってもいいよ。

結果として、誤差範囲の幅自体は広がったのが趣深いところです。21世紀のハイテク電子制御自動車に対して木炭バス程度のエンジニアリングしか求めない政府の神対応。

速度計の話題になると「基準改正があって、実速度より少しでも遅く表示されるスピードメーターは禁止になった」と解説してくれちゃう人が市井に多いのはこの第2ステップのせいでしょう。しかしまた、自動車メーカー側の社内基準に対してこれが大きな影響を与えたことも想像に難くありません。「計器の正確性を上げれば公的基準くらい通る」というところから、「正確じゃないところを正確に狙わないと基準に通らない」へのパラダイムシフトです。

別の見方をすると、車検現場での測定精度などを勘案して両側に公差を残すことになったものの、「うっかり速いのは許さん」という新方針自体は生きているとも言えます。実際にヨーロッパも同じ傾向のようで、少なくとも現在時点において、純正スピードメーターが比較的正確なのはアメリカ車だと言われているようです。

穿った見方をすれば、この新方針は自動車メーカーにとって悪い話ではなかったはずです。実速度が同じでもユーザーは「このクルマ昔乗ってたやつより速ぇ~最高!」ってなるし、また、車種によるでしょうが、仮に距離計と速度計が連動して同様のメーター誤差を食らっているとすれば、「このクルマ昔乗ってたやつより燃費めっちゃ良い~最高!」ともなります。こんな具合に馬鹿なユーザーを騙して合法的にパフォーマンス偽装も燃費偽装もできますし、8000kmしか走っていないユーザーが「やべー1万km越えちゃった!点検とオイル交換お願いします!」とか、8万km走ったオーナーが「もう10万kmだ!買い替えます!」とカモネギってくれるかもしれません。素敵じゃないですか。

まあ実際には、最近の車のコンピューター制御システム内では、これと別にかなり正確な速度計測値も存在するらしいですけどね。スピードメーター界における裏帳簿です。まあそこまでたどり着けなくても、スマホにGPS速度計アプリでも入れればかなり正確な速度計測が可能です。タダで。

「タイヤの摩耗で直径は変わるし、タイヤの銘柄やサイズ変更でも同様なのだから、基準に対して余裕を持ったサバ読みをしなければならない」とメーカーは言うでしょうが、これも眉唾ものです。なぜなら、タイヤが減ってもメーター読みに対して実速度は遅くなる方向にしか変化しないし、そもそもその変化量はせいぜい1~2%程度にしかならないし、また、純正以外のタイヤで極端に直径が大きくなるようなケースはユーザーの自己責任に過ぎないからです。

ではそろそろ、ここまでつらつらと書いてきた全てを一段落にまとめてみましょう。これ以上脱線して暴走機関車になる前に。

最近の車って実は、同じ心積もりで運転していても、昔の車よりスピード出てないんです。「制限速度キッチリ出してるのに煽られた!キーッ!」なんて話をちょいちょい聞きますが、そもそもそれ本当かな? 別に、何となく目の前を流れる風景の感じからしてこれくらいのスピードしか出せないよ~、とヨチヨチ運転をするのは悪いことではありません。しかし例えば、制限速度原理主義者が60km/h制限の道路を実速度53km/hでドヤ顔巡航するとき、その無邪気かつ滑稽なる無知を私は軽蔑します。運転者が何に対して責任を持つべきものであるかと言えば、それは現実の事象であり実際の速度であり、決して計器上の数値ではないのです。

(一部追記改訂:2019-04-21)

航空機操縦システム改修

先日、アメリカのB社から助けてコールがかかってきました。

ボーちゃん「うちの新型機がヤバイの… 助けて頂戴」

私「なんだい藪から棒に。うちは自転車ビジネスですけど」

ボ「でも乗り物のことならNSPに任せろって、お上が言うので」

私「お上ってぇとFAAかい、最近仕事がザルだって評判悪いぞ。大体おたくだって一昔前はうちの国土にボカスカ爆弾落としてたじゃないの。謝罪と賠償を求めちゃうぞ」

ボ「いや、うちは機体を作っただけですから… 第一、請求権のエンドレスおかわりってのは一寸はしたないべさJK」

私「まあ確かに」

ボ「それ言ったら貴国経済界の某モンスター企業だって、作った車がシリアくんだりの野盗御用達になってるでしょ」

私「高額納税者Tヨタさんの悪口はやめて」

ボ「なんでも、野盗シグネチャーモデルまで存在するとか」

私「某I§I§か… ていうかそれ不幸な偶然だし、登場の順番も逆だし、砂漠向きの車種でもないし、突っ込みどころ多すぎっしょ」

ボ「突っ込みどころと言えば!」

私「言えば?」

ボ「うちの新型機なんですけどね、操縦システムにシュパーブなテクノロジーでコントロールのオプティマイゼーションをインテグレートしたところ、墜落するんですよね」

私「てぇへんだな。クソみたいなゴタクは置いといて、コントロール介入の回路図を見せてよ」

ボ「ほいよ」

私「…逆にこれでよく墜ちないと思ったもんだよね」

ボ「やはり手前どもの技術力不足でございますか… いや私だってね、これに4重の冗長回路かませた上でエラー検出のために別置きでCPUを3個くらい走らせたら21世紀感あってイカしてるって体でマーケットにカミカゼランディングできるんじゃないかと具申したりしてたのに」

私「それはランディングと言えないし、そもそもアプローチの問題です」

ノースショアプロダクツは、主に自転車の開発と販売を介してあなたの生活と人生を豊かに彩るお手伝いをしています。その最終目標の前にあっては、手段とはまことに相対的なもの。一片の棍棒にもジェットエンジンにも、ものづくり精神は等しく宿るものなのです。

とりわけ、乗り物というものは、人類にとっての魔法の翼であり、近代文明の礎に他なりません。そこに正当なエンジニアリングが存在しないとき、その空白のピースを埋めることが我々のミッションでもあります。インドネシアでもエチオピアでも、技術開発における試行錯誤のために失われて良かった命など、あろうはずがないのです。

技術的課題がいかに困難であろうと、私たちが迷うことはありません。揺るぎない目標と、それを支える技術力があるからです。今回の問題に対しても、最適解を導き出すのにそれほど時間はかかりませんでした。シングルスレッド論理プロセッサーを直列配置し、さらにそれらをグリッド状に組み合わせることにより、リニアかつトレーサブルなレスポンスを実現しました。本当は社外秘ですが、ここだけの話ってことで回路図をお見せします。某イング社にも感嘆と狂喜をもって受け入れられたこの改修案、近日中に実装予定とのことです。

それでは皆さん、良い旅を。

Spinner Cargo 34 フォークのトラベル短縮化方法

取り扱いを始めたSpinnerブランドの「Cargo 34」フォークには、当社が独自に手配したストローク変更キットが付属します。

まっさらな状態のCargo 34フォーク。トラベル150mmです。

このようなワッシャーとスリーブを用意しました。以下、装着方法を解説します。今回はフォーク単体で作業していますが、自転車に組み付けて車輪が付いた状態でも可能な、簡単な作業です。

用意するもの

  • 六角レンチ(6mm)
  • ボックスレンチ(24mm)*モンキーレンチ等でも代用可
  • オイル少量(数滴程度、ゴム攻撃性のないフォークオイル等)

まず、エアスプリングの入っている左レッグ先端のボルトを外します。

次にエアバルブキャップを外し、空気を抜きます。

トップキャップを外します。

工具は24mm。がんばれば、モンキーレンチでもまあいけます。

外れたところで、フォークを縮めます。少量のオイルが出てきます。最悪、これを溜めておいて再利用という手もあります。

先端の穴から押して、エアピストンを抜きます。理想を言えば真鍮棒やアルミ棒で先端に芯押しの突起付き…なんて話になりますが、そっと押すだけなんでまあ何でも大丈夫です。

エアピストンが抜けてきます。

抜けたピストン。このコイルばね部分はトップアウトバンパー、つまりボヨーンと伸び切った時の衝撃を和らげるものです。この部分を分厚くすると、伸び切った状態でのフォーク長が短くなります。トラベル短縮の要点はこれだけです。

「もっとスマートに短縮させたい」という強いこだわりと技術のある方のための補足情報。バネの上端(写真右側)はロッドにロールピンで固定されており、実はロッドには元々50mmくらい下側にも予備のピン穴が開けてあります。ですので、ピンポンチでロールピンを打ち抜き、バネ全体を下寄り(写真左側寄り)にずらしてピンを打ち直せば、何も部品を足さずにストローク変更が可能です。道具と技術が多少必要になり、また微調整がきかず戻すのにも手間がかかることから、今回弊社ではスペーサーによる方法を採用しました。

トップアウトバンパーは端面にプラスチック部品をはめ込んであるコイルと、ゴムワッシャーで構成されています。この間にスペーサーを入れます。

一度ゴムワッシャーを抜き、5mmワッシャー2枚を入れた状態。トラベルはわずかに減って140mmほど、コレ自体はあまり需要ないと思います。ただし、以下のいずれのスリーブ組み合わせパターンにおいても、両端には必ずこの5mmワッシャーを入れて下さい。

今度は5+20+5で、30mm短縮するパターン。

そして、5+52+5で、62mmショート。

計算上はトラベル88mmまで減りそうに思えますが、実際には100mmほどになります。なぜなら、エアスプリングの構造上、空気圧によってゼロGでの長さが変わるためです。サスペンションというものは一般にストロークが短いほどバネを固くする(そうしないと底付きする)ものなので、ショートストローク化し、それに合わせたエア圧にすると、フォークの寸法は入れたスペーサーの厚みほどには変わらないのです。

また、これらの付属スリーブを全部入れて82mmショート、最終トラベル80mmあたり狙いというセットアップも不可能ではないですが、それで体重重め(フォーク硬め)の設定だとエア室の圧力が高くなりすぎるケースもありうるので、注意が必要です。別の切り口から言うと、21世紀のマウンテンバイキングにおいて「サスペンションフォークを付けたいが、トラベル100mmは長すぎる」というシチュエーションは基本的に存在しません。ですので「スペーサー全部のっけ」はあまり現実的な選択肢とはならなさそうです。

ゴムワッシャーを再度入れる際には向きに注意が必要です。これを逆向きにしてしまうと、動作中に空気が逃げられず、エアスプリング室とは関係のないところで圧力が発生してヘンな動きになるでしょう。

ちなみに、今回の作業には必要ないですが、もっとバラすと中身はこんな感じです。

おもむろにピストンを戻し、気密潤滑用に適当なオイル(フォークオイルなど、ゴムシールを傷めないもの)を数滴入れてトップキャップも締めたら、サスペンションポンプで空気を入れます。最終的には体重や乗り方によって4から6気圧くらいを目安に調整することになりますが、この時点ではまだ適当で良いです。

下側にあるピストンロッド端部を固定しますが、ここの穴径とボルト径は同じではありません。ですので、この時点でエア圧をかけてロッドがロアーレッグ内部のザグリにきちんと収まるようにし、芯が出ていることを確認してからボルトを締める必要があります。

組み上がり。この例ではスペーサー計62mm入りで、上記のように空気圧によって変わりますが、トラベル大体100mmくらいになります。

あとは試し乗りしながら空気圧を微調整して終了です。最速で2分、おっかなびっくりじっくりやっても30分くらいでできる作業となります。お疲れ様でした!

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