Spinnerフォーク、実は27.5″ホイール装着可能でした

先日の「うちのフレームにもシマノクランクが付くよ!」というニュースに比べると小粒なネタですが、またまたやって来ました、互換性検証シリーズです。

OSストレートコラムの救世主として仕入れてきた老舗スピナー社のサスペンションフォークですが、26インチだけでなく27.5インチのタイヤも装着可能と判明しました。こんな感じです。

27.5″でそこそこ太めなダウンヒルタイヤ、そこそこ幅広のダウンヒルリム。本当はもっとスキニーなタイヤでそっと試してみようと思っていたのですが、とりあえず手元にこれしかなかったのでドンといきます。いけました。

タイヤとフォークのアーチとのクリアランスが5mm。余裕です。このホイールセットを20世紀のダウンヒルフォークに履かせて、ここのクリアランス1mmなんて状態でDHレースで時々遊んでる私が言うんだから間違いないです。

加えて気にしなければいけないのが、フルバンプ時のクラウンとのクリアランスです。ここがフレンチキスしちゃうと極限の前荷重状態で前輪がメカニカルロックしちゃうのでとっても危ないです。ちょっと擦る程度なら死にゃしないんですが、そこはフレンチ具合によりけりです。とりあえず隙間は101mm。

内部構造とかは置いておいて物理的なトラベル限界としては、まあインナーチューブの出代以上には動かないと考えて、これが100mm。クリア!!!

ちなみにこのフォークは付属品として用意しているトラベル短縮キットを62mm分入れているので100とか101という数値になりますが、この数字自体はセッティングにより変動します。しかし相対的位置関係はそれに依存しませんので、このフォークにこのタイヤであれば、トラベル量設定やエア圧に関わらず、1mmの余裕があることになります。現実のライディングではフルバンプに至ることは非常に稀であり、またフルバンプ位置には一瞬しか留まらないということを考慮すると、この余裕はゼロ以上であれば何でも良いです。昔のサスフォークではちょっと太いタイヤを履いたらフルバンプで擦るのも日常茶飯事でしたから、自転車業界基準としては「だいたいゼロ以上」なら上等ってなもんです。

というわけで、好評発売中のSpinnerフォーク、だいたい27.5 x 2.4″までのタイヤが入ります。

実際には27.5″タイヤという最新規格のMTBであればほとんどが大径ヘッドチューブだと思われますので、そういうバイクにわざわざこのフォークを使う動機は薄いでしょう。しかし一方、O/S直管ヘッドで26″のMTBにこのフォークを入れると、ついでに前輪だけ27.5インチ化して新次元の走破性と取り回しの良さを両立!なんて風にセットアップで遊べる余地が出てきます。また、フレームによっては後輪も実は27.5″が入るものもあるでしょう。

前後異径というコンセプト自体は東京のワークショップ・モンキーが26/24インチで何十年も前に実現させているものでもありますが、ここに来て27.5″規格も絡める形でニッチな流行再来があるのではないかと個人的に予想しています。ま、27.5″であれ26″であれ、試してみるには割と気軽な41,800円のこのフォーク。ぜひご検討下さい。

Tanatosフレーム、実はShimanoクランク装着可能でした

弊社ブランド Libido Bike Co. が誇る旗艦モデルが、究極のストリート用MTBフレームである Tanatos。これについて街頭インタビューをすると、以下のような声が聞かれます。

  1. 「そもそもストリート用ってどういうもの? 私はパンプトラックとダートジャンプとスロープスタイルとスケートパークしか乗らないから興味ない」
  2. 「トップチューブとダウンチューブがトリプルバテッド管だとか、フレーム全体を溶接後熱処理しているからクロモリ鋼本来の強度と靭性が発揮されると言うけど、それでもフレーム重量が2.5kgあるなんて、軽量機材原理主義の我々からすると迫害対象と考えざるを得ない」
  3. 「ああ、例のパーツ選定が面倒くさいフレームでしょ? 特にBBとクランク周り、BMX系の部品を前提に設計されているけど、俺マウンテンバイカーだからそういうの分かんないし」

ごもっとも。では解説しましょう。

  1. ストリートとは文字通り街中の階段を飛び降りたり壁を走ったりするような乗り方です。機材設計の要点や方向性としては、パンプやダートやスロープスタイルやパークとほぼ完全に一致します。ドンズバです。
  2. 設計ミスでした。類似用途のアルミフレーム並みの2kgくらいで仕上げておけば、世間一般のフレームをストリートで乗った場合と同じように、数か月から数年のスパンでみんなフレームを折ってくれて私たちは買い替え需要でウハウハできたはずです。しかしながら、実際に乗ってもらうと「動きが軽い」とのコメントは多くとも「重い」と言った人は皆無です。
  3. そんなあなたに今日のトップニュース。泣く子も黙るシマノ製クランクセットが装着できます。

そう、実はタナトスにも、業界標準を牽引する世界のShimano製MTBクランクが付けられるのです。ということは、同じ24mmスピンドル規格であればRaceFaceその他、工夫次第でもう好きにして下さいってことです。ではさっそく、インストール実証写真をどうぞ。

必要な部品とセットアップの要点は以下の通りです。

  1. BBには、6805系BBベアリング(要はシマノBBのベアリング部分だけに相当するもの)を用意
  2. クランク位置調整に、内径24mmのスペーサーが適宜必要
  3. クランクには、XTやSLXのグレードに用意されている「チェーンライン+3mm仕様(2×11スピード)」、いわゆるBoost対応モデルを使う
  4. フロントスプロケットは、インナー24Tや26Tをそのまま使う
  5. リアスプロケットは、11T~12Tあたりを目安に、お好みでどうぞ

細かいところを順番に見ていきましょう。

1番、BBベアリング。

BBベアリングについては、シマノBBから打ち抜いて使うという裏技も無くはないですが、それより、アフターマーケットで同じベアリングと内径スリーブのセットがナンボでも売られています。それを買ってくるのが良いでしょう。何が合うのか分からなければ、魔法の呪文「トレックのBB90用」と唱えましょう。

右側のものが、今回ゲットした内径24mmスリーブ入りベアリング。

樹脂スリーブのツバ部分がベアリングより大きい仕様だったので、チョキチョキと切ります。ベアリング外径マイナスアルファにさえなれば何でも良いです。軽くラビリンスシールを構成する設計でしょうが、これはオマケ。決定的なシール効果はベアリング本体側で完結しています。

なので、ここまで入念なトリミングは不要です。今回はせっかくのデモ組みなので気合い入れてみただけです。あとは普通に圧入して終わり。BMX系BBと違い、左右ベアリング間に金属スリーブ入れなくて良いので楽ですね。

2番、スペーサー。

内径24mmのスペーサーも左右それぞれ適宜必要になりますが、これまたShimano純正だろうと社外だろうとナンボでも売ってます。BB買ったら付いてくる場合もあります。合計10mm分くらい必要です。器用な方なら、内径24mmのパイプを切るなり、旋盤で削り出すなり、または15/16インチ(23.8125mm)のワッシャーだって多分入るでしょう。15/16″なんて半端に聞こえるかも知れませんが、BMXのスプロケット中心穴はほとんどこれだし、32スカイラインとか、スポーツカーのブレーキマスターシリンダー径としても多いサイズみたいですよ。まあ関係ないけど。

Boost対応クランク、非対応クランクと、色々試したのでメモ書きがぐちゃぐちゃですが、最終的に現車に入れたスペーサーは右7mm、左2.5mm。個体差によりコンマ単位では前後しますが、これくらいでスプロケットとフレームのクリアランスも確保でき、チェーンラインも合い、左右のQファクターも均等で、左クランクとスピンドルのかかり代もほぼ最大です。ここから数mm分、スペーサーを足したきゃ足せることになります。

26Tでこのクリアランス。フレームや部品は多少なりとも走行中に撓むのですから、この部分であれば、最低1mm程度の隙間が必要です。現状たしか1.2mmくらいです。

チェーンラインは実測で約49mm。リアハブ側の50mmとほぼ一致しています。すごく大雑把に解説しますと、この差が3mmとか5mmになると(チェーンやスプロケットにもよりますが)問題が発生することもあります。別に10mmとかズレたまま乗ってる人もいるし、一瞬で壊れるわけじゃないですが。ここで1mmというのは、自転車工学的に言って、ゼロの誤差範囲内です。

次に3番。メインディッシュのクランクセットです。

型番に「B」が付くのが今日のラッキーレター。世界のShimanoがLi”B”ido Bikeのために開発した、そんな意味のBです。

クランクはこのBoost仕様でないと、スプロケットとフレームが干渉するので不可です。仮にスペーサー増し増しでごまかしても、今度は左クランクのかかり代が足りなくなるのが見え見えです。ここは素直に、”B”の恩恵を享受しましょう。

はい、以上です。

誤解があると厭なのでクドめに書きましたが、プロショップのメカニックなら拍子抜けする程度の作業内容で、Shimanoクランクがすんなり装着できました。

~以下蛇足~

とりあえず付きさえすれば良い、という黒魔術的アプローチに必要なのはここまでです。何故そうなるのか、仕組みや応用まで知っておきたいという方向けに、役立つかもしれない詳細情報を以下に付記しておきます。

肝となるのが、BB規格とベアリングの互換性です。

まず前提となる知識として、工業用ベアリングは、メトリック(メートル法)系列とインペリアル(インチ)系列それぞれについて、内径や外径のサイズ設定を絞り込むことで規格化・標準化されています。自転車用など、アプリケーションに特化した規格モノについては内径だけ普通より大きくしたり小さくしたりという一捻りもよくあるのですが、それでもほとんどの場合、何らかの標準規格サイズを元にしたものです。そんな標準的外径設定の一つに37mmというものがあり、タナトスに採用している「スパニッシュ規格」BBベアリングも、シマノのホローテック2などに使われるベアリングも、内径は違えど外径は同じ37mmです。

今度はそれを受ける側、フレームのBB規格について。実は最近知ったのですが、タナトスのために私が設計したBBシェルは、Trek社の「BB90」規格とよく似ています。

そもそもBB90とは何ぞや、ということになると、ネジ切りBBシェル+アウトボードベアリングカップを一つのシェル形状にまとめたものと言えます。歴史のお勉強ですが、昔は68/73mm幅のネジ切りシェルにバラ玉ベアリングを内蔵するのが普通でした。しかしBB剛性を上げるために細いスクエアテーパーを捨て、ぶっとい中空BBスピンドルを使用するにあたり、居場所のなくなったベアリングをシマノは最終的にシェル外(アウトボード)に配置しました。ホローテック2時代の到来です。ベアリング配置に着目すれば、圧入カップかねじ込みカップかの違いはあれど、昔ながらのヘッドセットに近い構造です。で、今度は「じゃあヘッドセットの進化と同じようにその外付けベアリングの受け部分までをフレームの形状に含めてやれば良いじゃん」という自然な発想があったとして、それを図面に落とし込むと、大体ぴったりBB90の寸法になります。

そのBB90とタナトスの「Spanish+」を比べると、シェル幅90mm、圧入ベアリング径37mm、というところまで一緒で、圧入深さが違うだけです。BB90ではベアリング規格で言うと6805番を使うのでその幅は7mm、タナトスでは6904番を元にしたスパニッシュ規格ベアリングなので幅9mm。確かBB90ではツライチの圧入、対してうちはツライチではなく10mm奥まで入れ(ツラから1mm引っ込め)ます。ということは、うちのシェルに6805を圧入すると、BB90とのツラの差は片側3mmということになります。ここまで来ればお膳立てはもうバッチリってなもので、スペーサーで隙間を埋めるだけのウキウキ消化試合というわけです。

実は、この逆のケースとして、シマノのアウトボードBBカップに6904系ベアリングをブチ込んでBMXのクランクセットを使うという「シマニッシュBB」なんて裏技もあります。いずれの場合も成否を握るのはチェーンラインやQファクターを正常値に収めるための部品選定です。シマニッシュであればBBスピンドルの長さが重要な要件になるでしょうし、今回のケースではフロントスプロケットとフレームの干渉が最大の関門でした。Boost対応クランクの登場によりやっと突破口が開けたということです。色々な方から頂いた要望やヒントのおかげでそれに気付くことができ、今回の実証実験につながりました。ありがとうございました。

なお、このセットアップのために必要な部品、例えばBBベアリングなどは、弊社で在庫しているものではありません。ですが、どうしても手配が困難であるというような場合にはご相談に乗れるものもございます。ご遠慮なくお問い合わせ下さい。

それでは皆さん、良い圧入を!

Spinner Cargo 34 フォークのトラベル短縮化方法

取り扱いを始めたSpinnerブランドの「Cargo 34」フォークには、当社が独自に手配したストローク変更キットが付属します。

まっさらな状態のCargo 34フォーク。トラベル150mmです。

このようなワッシャーとスリーブを用意しました。以下、装着方法を解説します。今回はフォーク単体で作業していますが、自転車に組み付けて車輪が付いた状態でも可能な、簡単な作業です。

用意するもの

  • 六角レンチ(6mm)
  • ボックスレンチ(24mm)*モンキーレンチ等でも代用可
  • オイル少量(数滴程度、ゴム攻撃性のないフォークオイル等)

まず、エアスプリングの入っている左レッグ先端のボルトを外します。

次にエアバルブキャップを外し、空気を抜きます。

トップキャップを外します。

工具は24mm。がんばれば、モンキーレンチでもまあいけます。

外れたところで、フォークを縮めます。少量のオイルが出てきます。最悪、これを溜めておいて再利用という手もあります。

先端の穴から押して、エアピストンを抜きます。理想を言えば真鍮棒やアルミ棒で先端に芯押しの突起付き…なんて話になりますが、そっと押すだけなんでまあ何でも大丈夫です。

エアピストンが抜けてきます。

抜けたピストン。このコイルばね部分はトップアウトバンパー、つまりボヨーンと伸び切った時の衝撃を和らげるものです。この部分を分厚くすると、伸び切った状態でのフォーク長が短くなります。トラベル短縮の要点はこれだけです。

「もっとスマートに短縮させたい」という強いこだわりと技術のある方のための補足情報。バネの上端(写真右側)はロッドにロールピンで固定されており、実はロッドには元々50mmくらい下側にも予備のピン穴が開けてあります。ですので、ピンポンチでロールピンを打ち抜き、バネ全体を下寄り(写真左側寄り)にずらしてピンを打ち直せば、何も部品を足さずにストローク変更が可能です。道具と技術が多少必要になり、また微調整がきかず戻すのにも手間がかかることから、今回弊社ではスペーサーによる方法を採用しました。

トップアウトバンパーは端面にプラスチック部品をはめ込んであるコイルと、ゴムワッシャーで構成されています。この間にスペーサーを入れます。

一度ゴムワッシャーを抜き、5mmワッシャー2枚を入れた状態。トラベルはわずかに減って140mmほど、コレ自体はあまり需要ないと思います。ただし、以下のいずれのスリーブ組み合わせパターンにおいても、両端には必ずこの5mmワッシャーを入れて下さい。

今度は5+20+5で、30mm短縮するパターン。

そして、5+52+5で、62mmショート。

計算上はトラベル88mmまで減りそうに思えますが、実際には100mmほどになります。なぜなら、エアスプリングの構造上、空気圧によってゼロGでの長さが変わるためです。サスペンションというものは一般にストロークが短いほどバネを固くする(そうしないと底付きする)ものなので、ショートストローク化し、それに合わせたエア圧にすると、フォークの寸法は入れたスペーサーの厚みほどには変わらないのです。

また、これらの付属スリーブを全部入れて82mmショート、最終トラベル80mmあたり狙いというセットアップも不可能ではないですが、それで体重重め(フォーク硬め)の設定だとエア室の圧力が高くなりすぎるケースもありうるので、注意が必要です。別の切り口から言うと、21世紀のマウンテンバイキングにおいて「サスペンションフォークを付けたいが、トラベル100mmは長すぎる」というシチュエーションは基本的に存在しません。ですので「スペーサー全部のっけ」はあまり現実的な選択肢とはならなさそうです。

ゴムワッシャーを再度入れる際には向きに注意が必要です。これを逆向きにしてしまうと、動作中に空気が逃げられず、エアスプリング室とは関係のないところで圧力が発生してヘンな動きになるでしょう。

ちなみに、今回の作業には必要ないですが、もっとバラすと中身はこんな感じです。

おもむろにピストンを戻し、気密潤滑用に適当なオイル(フォークオイルなど、ゴムシールを傷めないもの)を数滴入れてトップキャップも締めたら、サスペンションポンプで空気を入れます。最終的には体重や乗り方によって4から6気圧くらいを目安に調整することになりますが、この時点ではまだ適当で良いです。

下側にあるピストンロッド端部を固定しますが、ここの穴径とボルト径は同じではありません。ですので、この時点でエア圧をかけてロッドがロアーレッグ内部のザグリにきちんと収まるようにし、芯が出ていることを確認してからボルトを締める必要があります。

組み上がり。この例ではスペーサー計62mm入りで、上記のように空気圧によって変わりますが、トラベル大体100mmくらいになります。

あとは試し乗りしながら空気圧を微調整して終了です。最速で2分、おっかなびっくりじっくりやっても30分くらいでできる作業となります。お疲れ様でした!

Boost規格はゴミだと思う話

MTB関連の細かい話です。予備知識が無いと面白くないかもしれませんが、そこら辺のフォローは今回キリがないので申し訳ありませんが省きます。

MTBが誕生した頃、部品規格はかなりスッキリしていました。各部の寸法がほとんど統一されていたのです。MTB用の部品をそこらで買ってくれば自分のMTBに装着できて当たり前だし、どんなMTBでも簡単にニコイチにできました。それがここ10年から20年ほど、各社各団体がバラバラな規格を持ち込むようになり、部品一つ一つを厳選して自分のバイクを組もうというユーザーにとっては地獄絵図に他ならない現在のシーンが形成されました。車輪のサイズが26インチだけではなく29”も出てきて、さらに27.5”が主流になったのと同様の多様化が、あらゆる部品サイズ、また嵌合部規格に起こっています。

一方で、これはとても良いことです。ユーザーの体格に合わせた自転車を組みやすくなったということもありますし、最高の工業製品を作るには既存の規格からはみ出ないといけない場合というのは存在します。そうしたはみ出しが無ければ、例えばMTB発祥のアヘッドシステムがロードレーサーやBMXを含めた全てのスポーツバイクの基本となることも無かったでしょう。私たちの作るTanatosフレームにしても、BB規格は理由があって独自のものを採用しています。

しかし一方で、バイクデザイナーとして、私たちは理由のない規格分化には懐疑的です。その最たる例が、MTBのフロントハブ向けに提唱されているBoost規格です(付随して新規リアハブ規格も含まれているのですが、それもまた突っ込みどころが多くてキリがないので省きます)。

ロードレーサーやMTBなど、主に変速付きのスポーツバイクのフロントハブは、伝統的には9mm軸のクイックリリースシャフトでした。ハブの幅、いわゆるオーバーロックナット(OLD)寸法が100mmです。しかしMTBにおけるサスペンションフォークとディスクブレーキの標準化に伴い、20mmシャフト、110mm幅の規格が20世紀終わり頃からダウンヒルなどの機材負荷が大きいジャンルで多く使われるようになりました。軸が太くなったのはサスペンションフォークの構造に起因する軸周り剛性低下を補填するため、幅が広くなったのはディスクローターを取り付けてもハブのスポークフランジ間隔を確保してホイールの横剛性を保つためです。

ところが10年ほど前からでしょうか、15mm軸の100mm幅という次なる規格が現れました。ダウンサイジングによる軽量化を狙ったものです。私に言わせれば、こんなのは99%ナンセンスです。残り1%は、買い替え需要を狙うというセコい理由です。私たちにとっては不得意分野なので、こちらもどうでもいいです。

問題点を簡単に説明しますと、細い方が軽くなるというのなら、自転車のフレームだって昔のAlanのアルミロードみたいに細い方が一応軽くはしやすいのです。でもグニャグニャになりやすいです。20mmや15mmのハブシャフト自体はほとんどがアルミ合金ですから、細身にするよりも大径薄肉の方が同じ重さでも強度と剛性と軽さのバランスを取りやすいのです(この辺は素材によって適切な径は多少変わってきますが、アルミならもっと太くても良いくらいです)。本気でクロスカントリー的な走りでの性能を極めたければ、20mmの薄肉版シャフトを作れば良かった話です。机上の空論レベルを飛び越えて私の感覚だけで言いますが、その方が並の15mmシャフトより軽く強くできるでしょう。ちなみにですが、ハブメーカーは15/100も20/110もイケる互換ハブを多く出していますので、現実にはどちらの規格でもその範囲内で最適化された部品はロクに存在しないと言うこともできます。

で、ここに来て業界は新しいネタを用意してきました。それがBoost規格、15mmシャフトの110mm幅です。長く説明するなら、フランジ幅を確保することで特に大径ホイールの強度も安心ですし、安定の軽さだし、これまでの15/100より良い事ずくめだからいつ買い換えるの?今でしょ、ってことです。短く説明すると、これは15mm系規格の自殺です。OLDも詰めて軽くしようとしてたのに、ボクサーに例えれば減量のために髪を剃って歯も抜いて即身仏寸前のレベルなのに、やっぱり110幅だよね、ヘビー級で男を見せるよ、って強がってます。死にますよ。支点間寸法が長くなれば剛性確保のために直径も必要になりますし。

というわけで、個人的な希望も交えての結論なので丸ごと信用してもらわなくても全然構わないのですが、15mm規格は一回りして滅び、20/110に回帰するでしょう。まあ仮にエンジニアリングを突き詰めれば25/120とかにランディングする可能性も無くはないですが、それなりにバランスの取れた既存規格を塗り替えるのは大変な作業です。数年以内に20/110に回帰したとして、そこから10年くらいはそもそものハブ固定方法を含めた新たな模索が続くでしょう。

タイヤビードブレイカー製作(1)

最近、狂ったように工作をしています。と書いていて思ったのですが、それが平常運転でした。物心ついて以来、そういえばずっとそんなもんでした。

しかし、子供の頃の工作と大人の工作には大きな違いがあります。子供は作品を作ることに注力すれば良いのですが、大人になるとなぜか、作品自体だけでなく、製作過程をデザインすることや、製作に必要な道具を製作することに多大な知力や電力や筋力を費やす必要が出てきます。ほんと、なぜなんでしょうか。

というわけで、最近の道具製作プロジェクトの筆頭であった、タイヤビードブレイカーの登場です。うちの本業である自転車にはあまり関係ないのですが、自動車やモーターサイクルなどのチューブレスタイヤを組み替える際に必要となる工具です。

チューブレスタイヤの断面を見ると、通常最も肉厚があって頑丈なのがビード部分、つまりタイヤにとってはホイールとの唯一の接点となる部分です。ここがへなちょこだと空気が漏れるし、駆動力が滑って逃げるし、しまいには内圧に負けてタイヤが弾けて大事故になりますから、しっかりきっちり嵌っているのが基本です。で、タイヤ交換(夏タイヤとスタッドレスのそれぞれホイール付き別個セットを履き替えるとかじゃなく、減ったタイヤを外して新品に換えるような場合)には、必ずこのビードを落とす必要があります。ホイールの内側には逃げがあるので、外端にピチッと嵌っているタイヤビードを内に落とすわけです。それによって初めて、タイヤレバーを突っ込んだりしながらタイヤとホイールの知恵の輪を解くことができるのです。

余談ですが、ビードをホイールの逃げ(リセス)に落とさないとタイヤが外せないというのはチューブ入りの自転車タイヤでも基本的には同じことです。私も昔はタイヤレバーを曲げたり折ったりしたもんですが、それは単純に知恵の輪が出来ていないだけでした(というか今ではタイヤレバーをほとんど使わなくなりました)。MTBなどのチューブドはチューブレスに比べるとビードのはまりがユルユルなので、知恵の輪が分かっていなくても何とかなっちゃうせいで知識不足に気づかないのもよくある話です。また、一部の国産リムなどでほとんどリセスの無い設計のものがあったりして、変な時代でした。チューブレスだって、リセス無しで脱着できるほど緩いビードだったら一周キレイに座らせるのが難しくなり、タイヤ振れの原因になります。

話は戻ってビードブレイカーですが、まず落としたかったのがスモウローラー用にと思って試しに組んでいたバルーンタイヤです。

単管で枠を組み、その中でジャッキベースを使って押し下げます。これがまた、全然ダメでした。車屋さんが使うタイヤチェンジャー付属のビードブレイカーだと圧迫力が確か2~3トンだと思いますが、力の大きさもさることながら、圧迫の軌跡がきちんとコントロールされていないと力が逃げて失敗するようです。この直前には単管の自在クランプを支点とするテコ型も試しましたが、自在クランプだと片持ち支点と同じ力の逃げ方をするので、これまたダメでした。タイヤやホイールがズタズタに傷ついても良ければオプションは増えるんですけどね。

真っ直ぐ押せるものというと、あれかな? ということでバージョン2です。まず、直交クランプをバラします。今回のプロジェクトには右のHoryのものが良い具合でした。

ちなみにやたらと単管にこだわっていますが、一応理由があります。うちに何本か転がっているし、ってのもひとつですが、ビードブレイカーみたいな骨組みのかさばる道具は分解できるようにしておきたいというのが最大の理由です。で、骨組みやらテコやらに使える強度があって、壊れたらすぐ代わりを買ってこられる部材というと、48.6mm規格の単管が最強なわけです。サビにも強いし。

このへんはメーカーによって違いがありますが、Horyの直交クランプをバラすとこうなります。6mmのリベット4本をドリルで揉んで抜くと、裏に回り止めのポッチが2個とそれを受ける穴が開いています。さすが、頭いい構造ですね。色が変なのは、一応錆止めに亜鉛スプレーを塗ったからです。

バラした直交クランプと組み合わさるように、こんな部材を用意します。

できました! ジャッキの頭形状の都合で直接クランプを付けられず、手間が増えましたが、まあ良いでしょう。タイヤに当たる部分はDIYの良き友、まな板です。曲線が汚く見えるのは、多様なホイールサイズに対応すべくRと直線を組み合わせた贅沢シェイプにしたからです。

レッドロケット号プロジェクト最大の工作となったリアバンパーも、まさか初めてヒッチレシーバーチューブに受け入れるお客さんがビードブレイカーになるとは思いもしなかったでしょう。

しかし。

表側は何とか落ちたものの、リセスまでが遠くて落としづらい裏側はブレイクできず。だいたい、シザージャッキに大した横剛性がある訳がないし。回すのめんどいし。トラックのリアエンドなんて荷重かからないから車体が持ち上がる一方だし。よく考えたら、ひどい構想でした。失敗です。

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