Sumo Roller

今年の年頭に思い立ったお遊びプロジェクトが、完成しました。自分用のファットタイヤバイク「スモウローラー」です。

最近はタイヤ幅4インチとか5インチとか、太いタイヤのMTBが流行っていますね。周りで乗っている人も増え、少しうらやましくなったので、自分で作りました。せっかくだからもっと太くしてみよう、ということで幅12インチです。約305mmですね。外径はそこそこ大きめの25インチです。

仮組状態なので部品が一部異なりますが、別アングルの写真も一応。この自転車が初めて地上を転がった日の写真です。

部品は自転車のもの、モーターサイクルのもの、ATVバギーのものなどを組み合わせており、削ったり溶接したりといった加工も加えつつ形にしています。今回はまず完成したものがまともに機能する保証もなかったので、コストがかかる加工はなるべく控えることと、ダメならバラして部品を再利用できるよう、ある程度は後戻りがきくことを重視しています。まあ、杞憂だったわけですが。

で、組んで乗った感想ですが、本当に全てが異次元…と言えたら良いのに、意外とフツーでした。大きくて重くて、雪に強くてスピードが出ない。見たまんまです。では面白いかというと、これはもう最高に面白いです。普通に乗るのは全然難しくないけれど、そこで見る景色も、伝わる感触も、やはり未知の領域に属する体験であることは疑いようもありません。

完成してから10日ほどが過ぎたのですが、その間に80kmくらいの距離を乗りました。チェーンの初期伸びが出たので調整した程度で、トラブルはありません。これは正直意外です。色々な制約の中で作ったこともあり、いつ壊れてもおかしくないと思う部分は多々あるのですが。

改良の余地はまだあるものの、初代プロトタイプとしては期待以上の仕上がりとなり、また積雪期になんとか間に合ったのでプロジェクトは大成功でした。やはり、サンマは目黒、変な乗り物は自作に限ります。

アルマイト祭り

実は、新しいフレームの自分用プロトタイプが出来ました。まだ諸事情により組んでいないのですが、着々と部品を準備している最中です。今のフレームとはヘッドやBB(ボトムブラケット)といったパーツの規格が違うので、フレームだけ載せ替えるとしても必要な部品がいくつかあります。

ヘッドパーツやBBを用意したのですが、うちのブランドではないのでロゴもちょっとうるさいし、形も微妙に気に入らないし、ということでものによっては削って、アルマイトをかけ直しました。

アルマイトとは、アナダイズ処理ともいってアルミの表面に行う酸化皮膜処理のことです。ざっくり言うと、鉄の場合のメッキ処理と似たようなものです。表面の腐食防止に加えて着色もでき、硬度や摺動性を高めたりといったことも可能です。あくまでも金属自体の表面処理なので、塗装と違って剥げることがないのも特徴です。また塗装と違う点としては膜厚が数ミクロンから数十ミクロン、大雑把に言えば0.01mmから0.02mmくらいとなるため、処理による寸法の狂いが精密部分以外では問題になりにくいという利点もあります。

最近は自転車のカラーコーディネートに色々な選択肢が求められるようになり、色調が限られるアルマイトだけではなく塗装されたアルミ小物も増えてきました。が、工業的な視点から言うと、機能をないがしろにしているケースもあって気になります。塗装だと、組んで乗った状態で圧力がかかるところでは塗料が変形または剥離して寸法変化が起きるはずだからです。例えばハブのスポーク穴や、ヘッドパーツのスペーサー、ハンドルバー等について、使用中の寸法狂いで緩む可能性があると言えます。あくまで可能性ですが。

アルマイトで表現できない色の代表に、白があります(ちなみに、工業用語で言う「白アルマイト」とは無色=銀色のことで、白くはありません)。また、ネオン系に近いような鮮やかな色も無理です。塗装時の下地にガッチリ白を入れておかないと発色が悪いような色全般ってことです。けれども、白とかパステルカラーって結構人気がある色です。そこで何が起きるかというと、ファッション感覚でカラーコーディネートを売りにしているMTBルック車などでは、あらゆる部品が白く塗装されたようなものがかなり出回っています。一方でスポーツ用の真面目なメーカーの自転車がそうならないのには理由があるということです。

そんな理由でアルミの小物部品には最適と言えるアルマイトですが、DIYで処理できるキットなども売られています。色は自分で調合することも可能なので、楽しいですよ。私は久しぶりにやりました。

左上のステムは昔から持っているどうということもないものですが、最近引っ張り出して使ってみたら悪くないってことで、久々に日の目を見ることになりました。もとは銀色でしたが、ぶつかったら痛いので角をゴリゴリ削り、そのままではかわいそうなので再アルマイトしました。表面が化学洗浄したままの梨地なのが逆にお気に入りポイントです。

右下のシートクランプと薄くてラバーOリング入りのヘッド部品は、Sputnikを選んでみました。かなり深めの青を狙ったんですが、濃すぎて直射日光ガンガンで見ないと黒みたいですね。アルマイトでは、色調のコントロールが難しいんです。大メーカーでもロットによってバラつくくらいで、処理時間、処理温度、材質などの影響を大きく受けます。

Sputnikのシートクランプは鋳物のアルミでバリが酷かったので、修正ついでに少し穴の形を変えてみました。最初の色が化学洗浄でも全然落ちないので不思議がっていたら、まさかの黒塗装でした。ヘッドパーツの方は切削で真面目に作ってありますが、上面のステムまたはスペーサーに当たる部分の直径が小さくて、ちょっと不合理な気がするので削りました。手ヤスリで、全体を0.5mmほど薄くする感じです。DIYでやっちゃいけない改造の典型みたいなものですが、結構まじめに精度を出したので大丈夫でしょう。1周のうちで高いところと低いところの差が0.01mm程度には収まっているはずです。大した精度レベルではないですが、ぶっちゃけ市販のステムなんてもう1桁上で面が波打ってるものも普通にありますからね。これ以上追い込む意味はあまりないでしょう。

アヘッドスペーサーは手持ちの適当なやつですが、ものによって染まり方が全然違います。右の3枚はバラバラ過ぎて困りますが、左の3枚が大体目標通りの濃いめに仕上がったので足りるでしょう。多分、材質は6061や2017が混じっているとか、そんな状況でしょうか。

右のトップキャップは、今回どうしようもなかったものです。化学洗浄している時からスマット(スス)がひどく、合金成分というよりは不純物という感じでした。アルマイト処理は時間を変えたりして何度か試しましたが、全然ダメです。まあ、元が正体不明の鋳造アルミ(かどうかも分からない)にテンプラ塗装してあるレベル、完成車付属の部品単価で言えばヒトケタ円のものでしょうから、仕方ありません。まさかこの子も、自分がアルマイト処理される日が来るとは思っていなかったことでしょう。心の準備ができていないところにすみません。

左下は、DemolitionのBBスペーサーです。こちらもやり直しの甲斐なく、目標通りには染まりませんでした。まあ、あまり何度も化学洗浄していたら寸法もヤセてしまうので、また素材が分からない以上は処理条件の煮詰めようもなく、泣く泣く終了です。しかも今、厚い方をよく見ていたら変なクラックがビシッと入っています。Demolitionはライダーが良いから好きだったけど、こりゃ無いな。

という具合に悲喜こもごものアルマイト祭りだったんですが、まあそれほど破綻なくできて良かったです。そういえば、前回やった時は色がマダラになって困ったなあ。

自転車用の汎用圧入工具を、M16のクロモリボルトを利用して作って使っています。ボルト自体の強度は自転車工具メーカーのよくある圧入工具より遥かに高く、もし壊れても、または長さの極端に違うものが必要になっても、取り替えが利くので調子良いです。当然、内径16mmの色々なアダプターが必要になるので、買ったり作ったりしました。その中のChris King用のアダプターを旋盤で作った時に今回のステムと同じ色で染めたんですが、ムラがひどいんです。機能に支障ないので気にしちゃいませんが。ちなみにこの工具、ちゃんとスラストベアリングが入っているのがポイントです。薄い板が何枚か見えるところです。このベアリングにも自作のアルミ製内径アダプターをかましているので、次にアルマイトする機会があれば忘れず一緒にやってあげないと。

ステムに話を戻すと、純正のゴミみたいなボルトは捨ててちゃんと強度区分12.9のキャップボルトを入れるわけですが、設計者が何を考えたのか知りませんが長さが半端です。理想的と思われるのが、フロントキャップにM6x18、フォーク側クランプにM6x16となります。マジっすか? でも全部M6x15で組んで雌ねじが抜けても切ないので、泣く泣く探します。何本も切って面取りして黒染めするのも時間がかかりそうなので。ホームセンターは全滅、市内のネジ問屋は「規格にないサイズだ」と。いやいや、ネジ屋のカタログには大抵載ってるから!あと、シートクランプに使いたいM6x22もね!

ネット通販では見つかるものの、単価の安い小ねじのことで200本売りとかが主流です。そんな折に見つけて利用したのが、「ネジのプロショップ山崎」でした。対応も良く、本当に小口で買えるので助かりました。ちょっとだけ買うと送料が大きく見えちゃいますが、半端サイズの小ねじをいちいち箱で在庫するよりマシ。今は手元にM6x16が14本、M6x18が11本、M6x22が12本ほど残っていますが、これで一生このサイズは買わなくて良いレベルじゃないでしょうか。

ISO、お前もか

先日JIS (日本工業規格)について嘆いたりもしたのですが、それでは今回は国際規格である ISO (アイエスオー、イソ、アイソ、まあどう読んでも構わないでしょうか)でしょんぼりした話です。

ISO といえば、9000や14000シリーズの認証取得が流行っていますよね。あれはあれで、非関税障壁だとか利権だとか労働倫理がまともに存在する日本には不要だとか色々な批判もあるようですが、ここでは置いておきます。

私が体験したのは、ISO の工業規格で、自転車部品について調べものをしたときの話です。お題は、リアハブ。そう、駆動輪の中心で、人と車輪の狭間で回り続ける頑張り屋さんです。シングルスピード、ロードレーサー、MTBではそれぞれエンド幅(オーバーロックナット寸法)が110mm、130mm、135mmという風に違います(例外も色々とありますが)。ロードやMTBでは、変速段数も5とか6から10くらいまで、色々とあります。

ところが、ISO で規格化されているのは幅が126mmの6段変速まで。ボスフリーと呼ばれる、古代に栄えたロードハブ規格です。それ以降の多段化や MTB でのエンド幅拡張は、メーカー独自規格ということになっているんです。公式に。

悔しいのは、こんなしょぼい結論を得るために44スイスフランも払ったこと。規格文書は有料で、再配布や不必要なコピーまでが禁止されています。また、日本支部のサイトからも円建てで購入できるようですが、本国では英仏の2言語があるのに対し、なんの断り書きもなく英語版のみです。日本にフランス語人口が少ないことくらいは知っていますが、本来どんな選択肢があるのかは表記してほしいところです。そもそも日本語版がないのだから、支部の存在意義すら疑わしいものです。

そんなわけでがっかりしていたところ、以前ブーブー文句をつけていた JIS のサイトがきちんと見られるようになっているのに気付きました。そして自転車関連規格を漁ってみると、保存や印刷はできない設定であるものの、色々と役立つ情報が閲覧できました。素晴らしい。というわけで、今日は JIS の勝ちです。

(訂正: 2012/06/20 ロードバイクのエンド幅が旧規格の「126mm」となっていたのを「130mm」に訂正しました)

JISさん、頼みますよ

JIS(日本工業規格)について、最近調べものをしました。自転車部品を設計するときに、標準的な規格部品をうまく使えばメリットが多いからです。特に今はハブについて考えることが多く、構成部品が多いためになおさら重要なことです。メリットというのは例えば、

  • 価格を安くできる
  • 品質を安定化し、ばらつきを少なくしやすい
  • スペアパーツがどこでも入手しやすい

というようなことです。よく使うネジの形だとか、軸受(ボールベアリング)の標準的な大きさのラインナップだとか、こういうものが決まっていなくてメー カーがみんな独自に作っていたら、恐ろしいことになります。それは品質に問題が出るということではないのですが、例えば価格が天文学的な数字になってしまうということです。

そこで、工業標準というものが決められている訳です。日本には JIS があり、アメリカには ANSI、ドイツには DIN、イギリスには BS があるように。そして、人やモノが簡単に国境を越えるようになると、村と村とでしきたりが違うような状況はマズイ、ということになって国際規格として ISO が制定されて、各国の規格も ISO に合わせて改定されたりもしています。

さて、そこで JIS 規格を調べるために JISC(日本工業標準調査会)のウェブサイトを見てみたのですが、これがブラウザによっては全然見られないんです。まあ、普通に Internet Explorer を使っていれば見られるんですが、他のものだとサイトが表示されない(不正なコーディングのために html ではないと判断されているっぽい)とか、さらに他のとあるブラウザだと、トップページにアクセスした瞬間に怪しいダウンロード警告が出てきました。びっくりです。運良く中のページの URL が分かれば開けるページもありますが、一部のリンクが機能しません。細部まで見れば見るほど残念な作りです。

ウェブサイトについても、制作者側に「web標準」という言葉が浸透してきた通り、ページをどういう風にコーディングして、ブラウザはそれをどのように表示すべきかが決まっています(もちろん、最終的なページの見た目や内容をどういじるのかは自由なままで、です)。ページ製作者はプロであればそれを念頭に置いてサイトを作りますし、ブラウザソフトウェアはそれに基づいて開発されています。それは、工業におけるネジの形と同じように、標準化のメリットが大きいからです。

個人のサイトであればいくら web標準から逸脱していようと目くじらを立てるようなことではないですが、よりによって国家の工業標準規格に携わる人たちがこの程度の意識でやっているとは。なかなか悪い冗談です。

TPI (threads per inch)

TPIというのは、Threads per inch の頭文字です。ネジ規格の一種であり、一言で言うと「インチあたりのねじ山数」 です。

ネジは自転車に限らず機械全般に広く使われていますが、その直径やねじ山の角度、その間隔等を規格化することで汎用性を実現しています(汎用性、つまり規格に沿ったもの同士を組み合わせれば機能するということは近代的な機械部品では重要な命題です)。

一般的に使われるネジの規格としては、メトリック(メートル法)系列とインチ系列があります。前者については ISO規格によって標準化されたものがヨーロッパを中心として多く使われており、例えば M6 というと、直径6mm、ピッチ(ねじ山の間隔)1.0mmとなります(ピッチの異なるものも存在しますが、その場合は別途明記されます)。

一方、インチ系列はアメリカを中心に使われており、3/8″ 24 tpi というようにサイズ表記がされます。この場合、直径が8分の3インチ(9.525mm)で、ねじ山がネジ長1インチ(25.4mm)あたり24山です。

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