最後の踊りは丘を駆け下りながら(1)

年イチでしか最近は出番のないダウンヒルバイクですが、ここ数年着実に魔改造を重ねてきました。弊社がNorcoの日本代理店として営業を始めた2000年に自分用におろしてナショナルシリーズを数年走り、最高成績は確か青森での全日本選手権で11位か12位くらい。その後は長い冬眠を経て、2016年、2017年、そして今年2018年とニセコひらふでの大会出場に合わせて少しずつパーツを更新してきました。特に今年は、Jシリーズ現役時代から本当はやりたかったネタをついに実装したのです。

改造手術を終えて本番直前に札幌市内のばんけいスキー場でシェイクダウン。ちなみにここから先の記事はとても偏執的で何の役にも立ちませんので、ここで閲覧をやめるのも賢い選択です。

まず目を引くのが、まあ引かないと思いますけど、ホイールの大径化です。ここ10年ばかりの間にMTBは車輪サイズ規格の面で大きな変貌を遂げました。昔はMTBの誕生以来30年くらいほぼ全てタイヤ外径26インチだったのが、29インチの荒波を受け、その波浪に削られたり抗ったりする中で27.5インチも良いという話になり、我々の愛した26インチは今やレッドリスト入り間近とされています。まあそこには業界の欺瞞もありますが。

時代遅れってのも癪に障るので、去年から前輪に27.5インチをブチ込んでいます。これによって、昨今のヘッドチューブ角の鈍角化と同じ方向にジオメトリを変化させられますし。ギリギリ入ると計算して部品オーダーしてホイール組んで入れたら、本当にギリギリでした。タイヤとフォークの隙間2mmくらいです。後輪はフレーム形状の都合上どうしようもないので26インチのままですが、去年はビンテージタイヤがカピカピのズルズルでひどい目にあったので今年は新しいタイヤをおごっています。それにしても、前後異径を四半世紀も前から提唱していたワークショップ・モンキーはすごいなと思います。

で、それよりなにより、脱線変速機やめました。「ディレイラー」が「変速機」を意味すると思っている方に改めて教授しますが、あれは「脱線機」です。現状の自転車工学ではあれが最高効率なのは承知していますが、これこそが自転車のメカニズムにおける最大の恥部です。ヘンリー・フォードが言った(とされている)通りです。「どんなものを欲するかと人々に尋ねていたとしたら、もっと速い馬を、という話になっていただろう」。もっと多くの変速段数を。もっと滑らかな脱線機構を。既存のパラダイムの延長線上にあるのは未来ではなく、行き止まりの路地を華やかに突き進むだけのガラパゴスなのにね。そこに改善はあるとしても、革命は存在しないのです。

幸い研究用にシマノの内装11段変速ハブがうちに転がっていたので、それでホイールを組みました。サスペンションの無いハードテイルフレームであればこれで話が終わるのですが、フルサスペンションではそうはいきません。サスペンションの動きによってチェーン長が変わるからです。チェーンというのは遊べば即ち道を外れる放蕩息子みたいな奴なので、引き締めるためのテンショナー機構が必要です。

ここから先の設計は現車に合わせてのリバースエンジニアリング要素が大きいので、まずはとにかく現物合わせで検討します。

盟友ゴールドラッシュの岩佐賢一から以前「何かに役立てて」と頂いたEchoブランドのストリートトライアル向けチェーンテンショナー、役立てます。元は、変速付き自転車をシングルスピード化するときにディレイラーの代わりに装着する部品です。とりあえずそこらに転がっていたLアングルをサクッと切って穴開けて、タップ切ったりナット溶接してイモネジ入れたり。

理想としてはプーリーを1個かましてチェーンの張りが一定になるポジションがあれば良いのですが、そうは問屋が卸さないようです。まあ多少複雑な動きをする4バーリンクだし、仕方ないかな。ちなみに世間のチェーンデバイスではこうしたアイドラープーリーではなく円筒状のローラーがよく使われていますが、あれは機械設計のかなり根本的な部分でイケてないと個人的に思っています。

作業の都合上チャリが天地逆さまですがそれは置いといて、基本的にはサスペンションが縮むと要求チェーン長が長くなります。これはサスペンション形式を問わず多くのMTBに共通することです。

プーリーもう2個。これで何とかなりそうです。各プーリーの位置に加え前後スプロケットの歯数やチェーンのコマ数など変数が多すぎて、設計のマジな最適化は正直言って最初から諦めています。製品化するわけじゃないんだし。変数のもう一つは、サスペンションのトラベルです。最伸、最縮、中間、それぞれの位置での検討が不可欠です。なので、ダミーショック作りました。

ショックユニットの最伸長、最縮長、および中間2箇所を再現できるよう、そこらに転がっていた木っ端で治具を作りました。これは本当に役に立ちました。フルサスペンションバイクは本来これくらいしないと椅子の高さひとつ決められないという不便さがあります。適当にやるとタイヤとサドルが喧嘩します。

だいぶ息切れしてきたので、今回はここまで。多分三部構成で続きをお届けします。

地震から1週間

北海道大地震から1週間が過ぎました。まだ毎日余震でグワングワンしていますが、その頻度も震度も下がってきており、このまま沈静化しそうな状況です。ひとまず当社は無事ですが、被災者の皆様にお見舞い申し上げるとともに、早期復興をお祈りしております。

うちのあたりは震度5か6といったところだと思うのですが、ものすごい横揺れでした。ユサユサ、ってな可愛いものではなく、ドゴ!ドゴ!ドゴ!って感じです。鍵をかけていなかった窓は全て勝手に半開きになり、冷蔵庫は20センチばかり動いていました。

崩れた資材が風呂場のドアを突き破ってガラスを粉々にしてくれたのが一番目立つ被害でした。しかし他に内装も外装も壁にバキバキとヒビが入っていますし、困ったものです。ただ、同じ清田区内の道路や住宅地で起きたような液状化には見舞われなかったのがまだ救いです。

液状化が起きた地域はすぐ近所を含めて数カ所通りすがってきましたが、やはり地形的要素が大きそうです。札幌の平野部はもともと沼沢地が多く、とりわけ沼に沢が流れ込むような地形を埋め立てた場所が高リスクなのは自然の道理です。逆に宮の森や山の手のような西部の丘陵地帯に高級住宅地が多い本質的要因もまた、災害耐性にあると言えるでしょう。

とはいえ、今回はタイミングがひどすぎたのが大きいと思います。地震のちょうど24時間前が、台風21号のピークだったのですから。どちらかというと風台風でしたが、当然かなりの量の雨も降った直後の地震だったわけです。

うちのすぐ裏手でもこんな状況になっていましたが、中央分離帯の街路樹がほとんどなぎ倒された幹線道路などもありました。

1週間経って札幌はかなり日常生活を取り戻しつつありますが、まだ計画停電の可能性もあり、また何より普段の買い物にも不自由はあります。例えば一昨日、震災から5日目の夕方に立ち寄ったコンビニの様子。

テレビ塔を間近に見上げる、200万都市中心部です。スーパーマーケットも、特に牛乳売り場などは未だにこんな感じです。今後は災害対策として一家に一頭ホルスタインを飼うのが流行ると思いますが、それが行き渡るまでは多少の我慢を強いられることになるでしょう。まあしょうがないですね。

そうそう、末筆になりますが、話変わりますけど、大坂なおみ選手、おめでとうございます。

Red Bull パンプトラック世界選手権 in 赤井川

週末、けっこう大きな自転車の大会に出てきました。最近はやりのパンプトラック(凹凸うねうねの周回コース)で速さを競う新種目で、主催はエナジードリンクのRed Bull。10月の世界最終戦に向け、世界各地、確か20箇所ほどで開催されているシリーズの一環で、今回のものが日本予選という位置付けになります。

開催地は北海道の赤井川村。小樽とニセコの中間くらいに位置し、日本で唯一火山の噴火口内に人が住む土地であり、カルデラ内の集落を中心に1000人ちょいの人口があります。今年始まったこの大会シリーズは「Velosolutions」というスイスのトレイルビルダーとレッドブルとの緊密な連携のもとに運営されており、今回日本初のVelosolutions謹製トラックがこの赤井川にあるレクリエーション施設「Tomo Playpark」内に作られたというわけです。

私の住む札幌からであれば車で1時間半程度の距離に世界レベルのコースができたわけで、本州のライダーからすれば「ずるーい」と言われそうな状況ですが、まあ北海道にはろくなBMXコースも公共スケートパークも無いという惨状に鑑みてジェラシーの鉾をお収め下さい。ちなみに赤井川での事前練習は一切できなかったので、そこもジェラシる必要ないです。日帰り圏でこの大会が催されたことはもちろん非常な幸運でしたけれど。

コースにある洗濯板様の凹凸を利用して自転車を加速させるのがパンプトラックの醍醐味で、原理としてはブランコを漕ぐのと似たようなものです。このパンプ力に関しては私けっこう自信あったんですが、同時に本州から来るガチBMXレーサー勢がやっぱり大本命だろうなとも思っていました。コースが長いので、持久力か死か、って感じですし。

予選は一人ずつ走って時間計測し、男子32人、女子8人が決勝トーナメントに進みます。決勝は「デュアル」を謳って2人同時スタートですが、コースが単一のループ状なので実際には「追い抜き」形式でした。輪っかを時計に例えれば3時と9時の位置からヨーイドン、からのそれぞれ3時と9時まで1周、てことです。

で、結果。とりあえず20位で予選通過できましたが、決勝ですぐに敗退し、ベスト32止まりでした。無念。すごく大雑把に全体結果を総括すると、男女各トーナメントの上半分はだいたい本州ガチ勢に占められていました。下半分に北海道ローカル勢が入れたのはとても喜ばしいですが、トーナメント第一ラウンドでまとめて虐殺された感じです。

そうそう、サイクルスポーツのオンライン版でこの大会の記事が出ましたが、1枚目の写真に写っているライダーが私でした(照)。奥の方をよく見ると対戦相手の竹之内悠選手の背中も写っています。ロードにMTB、シクロクロスと幅広く活躍しているすごいライダーです。赤Tシャツの私は少しでも脚力を保たせるために前日考案したスイッチスタンス大作戦で、いつもと逆の左足を前にしてこのセクションを走っていますが、そんな小手先でどうこうなるものでもなく敗退をキメたのでした。

結果はまあショボショボでしたが、色々なライダーが色々なバイクで参加し、和やかな空気の中で頑張って競争して、楽しいイベントでした。4月頭にこのレースを知って申し込み、一進一退ありつつもここに向けて体のコンディションを整えて来られたことも今後につながる収穫でした。一緒に遊んでくれた皆さん、応援してくれた皆さん、ありがとうございました。

Clickerハブ再アルマイト

さて、だいぶ以前から匂わせるだけ匂わせていた作業のご報告です。リビドーバイクカンパニーから発売中のClickerハブ、漢のグリーン単色展開なのですが、他の色が欲しいというご要望にめっちゃランダムにお応えすべくいくつか再アルマイトしました。ご要望の多かった黒が数個、その他は各色1個2個程度です。

10月12日追記: おかげさまで特別色の在庫はBlackとIce Stoneのみとなりました。

早い者勝ちですので、気になる方は取扱店または弊社にズバッと注文して下さい。現在いずれも11Tコグ仕様で組んでありますが、12~16Tの2ピースコグ仕様への変更も可能です。

注意点ですが、気まぐれに社内で化学実験をしたものであることと、陽極酸化処理を再度行うという作業自体の特性から、製品としての完成度は元の緑Clickerより低いです。アルマイト剥離に伴う表面の荒れなどが結構あります。機能に差し障りのあるものは弾いていますが、表面のザラつきや色ムラ、経年劣化での退色などについての保証はございません。

実は今回陽極酸化処理設備を一新したこともあり手間暇コストいっぱいかかっていますが、上記完成度の問題と相殺でお値段据え置きです。

ちなみに、手間のかかり具合が実際半端ないので、今後二度とやらない可能性が高いです。さらに正直言うと、精度の悪化がひどくてゴミになったハブシェルがいくつもありますし。

それでは以下、再アルマイト加工したハブの色調をご紹介します。画面での見え方は実際の色合いと異なる場合があります。

Black
定番の黒ですが、ツヤの出方に個体差があります。マット気味、グロス気味など、在庫の中から可能な限りご希望に対応します。

Dark Matcha – SOLD
個人的には大好きな色です。

W.E.B. (Wedgwood English Breakfast) - SOLD
染色に老舗ウェッジウッドの茶葉を贅沢に使用しています。

Ice Stone
青みがかったグレーです。

Dirty Gold - SOLD
ランダム染め、かなりワイルドでグランジな感じになりました。

Dirty Champagne - SOLD
上のと近いですが、やや黒比率低めです。


ご質問などございましたらお気軽にどうぞ。お問い合わせフォームはこちらです。

先取りハロウィーンやっと終了

先月はそれなりに疾風怒濤の波浪に揉まれました。そう、世間よりもきっかり半年早く、ハロウィーンを始めてしまったのです。

しかも、自転車に乗っていたとは言え、何か攻めていた要素など一切なく、ただの移動中。恥ずかしいったらありゃしない。優しい通行人と優しいお巡りさんとに救われ、プロフェッショナルな救急隊と病院に助けられ、擦過傷と裂傷と頭蓋骨骨折に見舞われながらも大筋では無事だったのがまあ何よりです。しかしこれではジャニーズ復帰が危ぶまれるところです。参ったなぁ。

そんな具合に幕を開けた私の誕生月ですが、今年は運転免許の更新があるのでした。ただでさえ誰しも人相が平時より2ランクは悪く写ると囁かれる免許証ですから、ここはギリギリまでじらして粘る作戦でいきます。

そして先週、更新期限2日前。

ほぼほぼ、人間界に戻って来れました。ああよかった。

ご心配をおかけした皆様、手を差し伸べてくれた皆様、本当にありがとうございました。おかげさまで私はまた元気になり、平常通り変なモノづくりに勤しんでおります。

  • 記事カテゴリー

  • 月別アーカイブ