ストリートやダートジャンプを激しく乗るライダーは、自転車がBMXであってもMTBであっても、BMX用に開発されている3ピースクランクセットを使う人が多いです。3ピースというのは、左右のペダルの間に、左右それぞれのクランクと中心のボトムブラケットシャフトの3つの部品が存在するということです。それに対して1ピースクランクというものもあるのですが、これは1本の棒を曲げてその3つの部品の代わりにしているものです。BMXや、ビーチクルーザーの安いものに使われています。
その回転軸となるBB(ボトムブラケット)については、以前には、BMXならBBの規格は俗にアメリカンと言われる大径のもの、MTBなら俗にユーロと言われる小径のねじ込みのもの、という棲み分けがありました。ユーロというのはBMX業界での通称で、MTBとロードの業界内ではその中でも数種類の規格が存在しますが、「ユーロ規格」と言えばその中でも多数派であるISO規格の標準サイズ(日本のJISおよびイギリスのBSCを含む、ネジ規格が1.375″ x 24 tpi のBCネジ。BBシェル幅は68mm)を指します。
BBシャフトの太さは、長きにわたって業界標準となってきた Profile 社の Race クランクセットと同じ、3/4インチ(19.05mm)が多く使われています。よく、「19mm」と呼びならわされていますが、これは不正確です。なぜなら、ベアリングにはメートル系とインチ系が存在し、これはあくまでもインチ系の規格だからです。
また、1990年代後半の頑強ブームの中では、これより太いBBシャフトが流行しました。Profile、We the people(WTP)、Primo、Demolition などの「22mm」や、Perv の25mmといったサイズです。
BMXパーツの大手、Profile 社のウェブサイトには、同社のSSクランクセットのBBベアリングについて、他社である WTP や Primo のベアリングとは互換性がないと書いてあります。ここで豆知識をひとつ。BMXパーツ各社の3ピースクランクの中で、 この Profile の SS のみが7/8インチ(22.225mm)のシャフト径です。ハンドルバーの、グリップやブレーキレバーの付く部分と同じです。対して、WTP や Primo は、22.0mmなんです。たかだか0.2mmとはいえ、そこにはインチ規格とメトリック(メートル法)規格の差があるので、別物なのです。ベアリングの寸法も、それぞれ別の規格なので違います。そして、BMX用のユーロBBが存在するのはメトリックの22.0mmのみ。 私のバイク(MTB)は、ユーロBBで Profile の SS クランクを使うために、実はシャフトのみ WTP を使ってきました。当社調べでは、WTP の22.0mmシャフトは Profile SS に使われている7/8″シャフトの外径を削り落としたようなもので、セレーション(シャフトの勘合)は互換性があります。でも、もちろんメーカーの保証対象外になりますので自己責任の世界です。
規格違いも、見た目で明らかに違えばまだ良いのですが、微妙な差になってしまうと困りものです。ですが、予備知識と実験精神があなたを救うこともあるというお話でした。参考になりましたでしょうか?(加筆訂正: 2008/07/23、2017/05/13)