最近よく、DVDを借りてきて映画を見ています。自転車ムービーを作るのも仕事なので、勉強という意味合いもありつつ、実は単に映画が好きなだけです。自分の備忘録を兼ねて、最近見た映画の批評などをつらつらと、今回は有名な映画を中心にいってみましょう。
ビッグ・ウェンズデー
1978年の古い映画です。サーフィンというスポーツ、それにかける若者たちの情熱、そして彼らを翻弄する社会のうねりとベトナム戦争、といった内容が描かれています。これは何度見ても良い映画です。サーフィンはほとんどできないのですが、多少は似たようなスポーツをしているので余計に共感できるのでしょう。「ロード・オブ・ドッグタウン」も面白かったですが、四半世紀早く作られたこちらの作品がその原型と言ってもあながち間違いではないでしょう。
Mr.&Mrs. スミス
これは見た人も多いと思いますが、ミーハーながら結構好きな映画です。ただ残念なことに、日本では一番大事なメッセージ性が見逃されている気がします。私が考えるに、タイトルの本当の意味はズバリ、「田中夫妻」。派手なアクションが売り物と思われがちですが、それはある意味全てが比喩で、男女の間の普遍的な関係を脚色しているだけ。だからこれは、どんなカップルにも起こりうること、隠し事、意地の張り合い、衝突、そして信頼、そうしたことを極彩色で描き出した寓話。そう考えると、とたんに面白く思えるようになったのでした。ちなみに、同じことは「ファイト・クラブ」についても言えるでしょう。あれはどんな男の中にも草食系の僕と肉食系の彼が戦っているという話だと感じました。ブラッド・ピットは、こういう本当は少し入り組んだストーリーをアホなふりして飄々と演じるのが上手いですね。
ブラッド・ダイヤモンド
最近見た中では一番衝撃的だった社会派作品です。アフリカでのダイアモンド利権と欧米の強欲企業による後押しに政争と民族問題が絡み合うストーリーには、目を開かされました。もちろんこの映画の視点が完全に客観的な見方だなどという幻想は抱かない方が良いでしょうが、色々な人に見て欲しい映画です。個人的にツボだったのは、主人公ダニーの悲哀ですね。彼の出身はローデシア。私も後から調べたのですが、今はもう無くなってしまった国で、隣接する南アフリカ共和国に近い社会制度を持っていました。つまり少数白人による支配です。しかしその崩壊と共に家族を奪われ、南アフリカ軍に拾われたりしつつ、砂上の楼閣と化した自分の故郷とアイデンティティを大事に抱えてアフリカをさまようマイノリティとしての白人を、レオナルド・ディカプリオはよく演じていると思います。ちなみにローデシアの語源は、ダイアモンドで莫大な富を築いたセシル・ローズ、世界のダイアモンド流通の9割を牛耳ったデビアス社の創始者その人です。
グラン・トリノ
冒頭から途中までは、「許されざる者」と似てるなーなんて思いましたが、結局は良い意味で全然別の映画でした。私の評価としてはまあ普通なんですが、見終わった後に余韻が重く染みわたる作品です。ちなみに、グラン・トリノはかっこいい車だと思いますが、それ目当てでは失望するでしょう。あくまでも人間ドラマですから。クリント・イーストウッドはこの後監督業に専念すると宣言したようですので、彼の演技が好きなら見ておきたい作品です。他に彼が監督した「チェンジリング」も見ましたが、アンジェリーナ・ジョリーの鬼気迫る演技とあいまってこちらは驚くほど良い映画でした。彼の最近の作品を見ると、長いキャリアの中で彼が追い求めた「正義」というものの幅と深みが増したなと思います。他に老人が心を開く話が見たい方は、クリントと関係ないですが、是非「ハリーとトント」を見ましょう。古いけど私が好きな映画です。かわいい猫も出てきますし。