栗城史多(くりき・のぶかず)という人が登山家としてテレビに出たり、話題になっているのは5年ほど前に知りました。その頃に、バッタリ会って握手してもらったこともあります。
今では、私の黒歴史です。
栗城くんについてはネット検索をすれば情報が出てくると思うので、ここでは詳しく触れません。が、警告はしておきたいと思います。
フェアプレイの精神というものを抜きにすれば、人間は人生のあらゆる局面で驚くほど簡単に嘘を重ねて他人を信じ込ませ、そこから大きな利得を得ることが可能です。さらに悪いことには、現在の日本のマスメディアは「情報を伝えるだけではダメだ、価値を創造しないと」という勘違いからか、そうした活動を支援することには熱心です。今回は、私の好きな登山に関わる話であり、また私の関わる自転車界でも似たようなことは時々起きていることから、見過ごせないと感じたのです。
最近、知人がソーシャルサイト上で栗城くんの応援メッセージをシェア(再配布)していたのですが、そこに噛み付いてしまいました。私って、性格悪いんでしょうか。でも本当に、「悪をシェアする奴は悪」って思うんですよ。また、自分が発信した1次情報じゃないからといって責任感が無い奴が多すぎるとも思います。
というわけで以下、「悪sharing悪 vs. 性格悪」のやり取りです(あくまでも個人メッセージではなく公開コメントです)。まあ私にも3mmほどの優しさはあるので、個人情報は消しますよ。それ以外は原文のままです。
草原の友達A shared 友達の友達B’s photo.
シェアいたします!!少しでも興味がある方はぜひに!「どうかシェアお願いします」
僕たちは、北海道出身の小さな登山家・栗城史多くんから多くの勇気をもらった。今、彼はエベレスト登頂失敗の上、凍傷により指を切断の危機に迫っている。今こそ彼を応援しよう! 講演会に行こう! そんな栗城君を応援しようと岩見沢の若者が立ち上がった!彼の名を※※※※という。 どうか栗城ファンの方、※※くんを応援&激励&これをシェアしてあげて少しでもたくさんのご来場者を期待します。5年来のうちのお客さんだった栗城くんをよろしくお願いします。 どうか、栗城君の指が何ともないように祈ります。3月3日(日)18時~栗城史多 講演会
場所: まなみーる岩見沢市民会館
北海道岩見沢市9条西4丁目1番地1入場料:前売券2,000円(小中高生1,500円)
当日券3,000円(小中高生2,500円)
さてと。他人のやることにケチを付けていたらキリがないですが、自分の知人が巻き込まれていれば話は別です。居ても立ってもいられない気持ちを抑えて、しばらく居たり立ったりしてみましたが、結局コメントしてみることにしました。
草原
うーん、ちょっと待って。栗城くんって、かなり微妙な存在だって知ってる?他の真剣で実力のある登山家への敬意も無いし、自分の実力に対する客観視もできない。単独とか無酸素っていうのはヒマラヤに行く山屋にはプライドと命を賭けるほど重要なポイントなんだけど、それを大きく歪曲してもいる。
怪我は可哀想だけど、エベレストでiPhoneを使いたいから指なし手袋を履いていたって、不思議な話だよ。
すみません、不肖草原正樹、ヒマラヤ行ったことありません。知ったかぶりしました。富士山ガイドの同僚で7大陸最高峰の最年少記録を作った面白いヤツを知っていますが、草原本人はただのアームチェア山屋です。最近の大きな冒険としては、昨日の夜更けに未踏の雪原をラッセルしたくらいかな。近所の大学構内で。通りたかった近道が除雪されていなかったもので。
草原の友達A
まさきさん、お久しぶりです!!コメントありがとうございます^^昨日コメント書いたのに反映されていなくて。栗城さんなのですが、私自身下調べをせず、周りの大好きな人たちが盛り上げようとしているのを見て、ちょっとでも協力したいなと思ってシェアした次第でした。なので、そういう一面もあるんだな〜と勉強になりました。
栗城さん自身というより、実際栗城さん(とその行動)にインスピレーションをもらったり励まされたりして、やりたいことすべきことに邁進していくパワーをもらっている人がいるのは事実なので、それは素敵なことだと思っています^^a
あれ? あれれ? まさかの山頂直下バリエーションルート?
仕方がないので、こちらもダブルアックスに持ち替えて山頂アタックに向かいます。
草原
うん、久しぶり。いきなり突っ込んじゃってごめんね。でもね、そういうインスピレーションの話を持ち出すなら、結婚詐欺で一時のいい夢を見た人もいるし、オウム真理教に生きる希望をもらった人もいるわけだ。
実は単独で高山を攻めたこともない、酸素が必要な高度まで人生で一度も到達したことさえない、そんな売名詐欺師がいたら、彼が喉から手が出るほど欲するのはFacebookでのシェアと濡れ手に粟の法外な講演料収入。そこに援護射撃を提供してしまったのが無知からであれば仕方ない。けれど、それを正当化できると言うなら、それが自分の間違いを認められない小さなプライドのためであろうと、浅薄な仲間意識によるものであろうと、あるいは他の理由であろうと、片棒を担いだということだけが事実なんだよ。
この手の講演としてはめちゃくちゃ高いようだけど、彼に落とすお金は死に銭だよ。それは彼のために焼肉となり、プヨプヨの腹についた脂肪の9キロカロリーにはなるかもしれない。でも、ヒマラヤの青い氷にピッケルを振るうための1カロリーには使われない。彼が人に「インスピレーション」を与える支えにはなるとしても、そこには少なくとも俺がリアルだと感じられる「冒険」はない。
それでも笑って神輿を担ぐかどうか、後は俺が決めることじゃないけどね。
草原の友達A
なるほど。たしかに、反対意見も多々あって然りです。
何にせよ、お忙しい中貴重なご意見をシェアして下さって、ありがとうございました(*^^*)みんな、自分の物差しでものを見て判断しているにすぎないんですよね。私もそうです。それをどう捉えるかは受け取り手次第になってしまいますが、フェイスブックは見たくないと思ったら、その人をニュースフィールドに表示させないことも出来ますもんね(^o^)
一個人として、フェイスブックは個人を非難したり水を差したりする場としてではなく、応援する場として使っていきたいと思っています(^o^)
徒労感。クランポンが全然刺さらない。このクーロワールから抜け出せる気がしない。この上に山頂があるのかどうかさえ、今は疑わしく感じられる。ガスが濃い。遠くから、落石の音が聞こえてきた。
One thought on ‘栗城史多という名の「登山家」’