世界でも類を見ない年間6mの積雪がある200万人都市、札幌。数日前にも記録的な積雪があったばかりです。そこに暮らすからには、走破性の高い自動車が必要です。
悪い例。
未だに思い入れのある先々々代NSP公用車ですが、時々亀の子スタックしていました。「LSDさえ入っていれば後輪駆動車でも雪道いける」という信念を持ってはいますが、最低地上高はやはり車検に通る程度はあった方が埋まりにくいわけです。で、この頃の反動で今は走破性の高い車に乗っているという面もあるのですが、ではどうやったら車の走破性を高くできるか、設計の基本を(独断と偏見にもとづいて)おさらいしてみましょう。
- タイヤの外径はなるべく大きく
自転車の設計でも同じことですが、荒れた路面を走るには、タイヤの大きさ、とりわけ直径はもう絶対的正義です。 - 機構はなるべくシンプルに
よっぽどお金のかかっている現代の高級SUV車の場合は話が違うかもしれませんが、ローテクな方が良いです。パートタイム四駆でマニュアルフリーハブ付きなんて仕様じゃないと、スタックからのもみ出しもロクにできませんから。
ええと、立派なリストにしようとしたら2つだけで終わっちゃいました。あとは、大きいタイヤをブン回せるだけのエンジン出力があるか、ギア比が適正か、など背反条件は色々とありますが、単純に言えば、ボディに収まる最大サイズのタイヤを履かせるのがベストです。他のことはそれに合わせて決めていきましょう。
パジェロに履いていた、FJクルーザー純正タイヤをあてがってみます。うん、これでいいや。265/70R17というサイズはやや細身の大径で、ちょっと今風でもあって、私はけっこう好きです。
純正ホイールのオフセットが+38、FJは+15ですからホイールが外に出てアライメントが変わりますが、これが実はちょうど良いのです。詳しくはキングピン角度やスクラブ半径といった用語なしには説明しづらいのですが、簡単に言うと、タイヤ外径の変化によるアライメントの狂いを相殺し、かつトレッド幅も広くなるので安定性も増し、ウィンウィンです。改造したら真っ直ぐ走らない車になったなんてのは最悪ですから。
純正タイヤよりも外径が150mmくらい大きくなりました。タイヤの前後方向はギリギリ収まりそうだとして、サスペンションが縮んだ時にはフェンダー上部とタイヤが当たるでしょう。半径の差分が75mmですから、日本車の常としてチェーンを巻くだけの余裕を含めた設計だと想定して、50mmボディリフトすれば良さそうです。
もっとアホみたいに車高を上げて、フェンダーアーチなど関係なく馬鹿でかいタイヤを履かせる改造スタイルもありますが、私は好みじゃありません。深い泥の中を真っ直ぐ走り抜けるというような極端に限られたシチュエーションでは走破性が高いでしょうが、横転しやすいし視界も悪いし、何より設計(出来上がったカタチ)に必然性が無いものはちょっとね、と思うわけです。そこまでやるならボディ切り欠いてフェンダーアーチも作り直そうよ、というか。ただ、もしそういう高足ガニ的ハイリフトを作るとしても、キャブオーバートラックは最適です。前方下の視界が良いですから。
あともう1点、改造というか装着したいものがありました。
ブルバーです。カンガルー避けとしてオーストラリアで使用率が高いですが、日本ではかつての「RVブーム」での氾濫から一転、歩行者保護の潮流の中で一気に嫌われ者になりました。それでもこれを付けたい理由は、まず私キャブオーバー乗るのが初めてでして。積載効率最優先の商用トラックですから、前面を何かにぶつけたらペラペラの鉄板を隔ててすぐに自分の足があります。怖いです。また、北海道は野生のエゾシカの頭数コントロールが全くできていません。道路上には歩行者よりも鹿が飛び出す可能性が高く、衝突で乗員が怪我をして移動能力が失われれば命にかかわる自然環境があるわけですから、まあまあ真っ当な装着理由と思います。
というわけで、外側の主ないじり箇所はこの程度なわけですが、主じゃないところや内側や何やかんやで作業リストは収集がつかないほど伸びていくのでした。よく考えたら私、そんなにゴツい車いじりってそもそもしたこと無いんですが。ヤル気とビジョンと無知っていうのは素晴らしい組み合わせです。
(つづく)