最近、狂ったように工作をしています。と書いていて思ったのですが、それが平常運転でした。物心ついて以来、そういえばずっとそんなもんでした。
しかし、子供の頃の工作と大人の工作には大きな違いがあります。子供は作品を作ることに注力すれば良いのですが、大人になるとなぜか、作品自体だけでなく、製作過程をデザインすることや、製作に必要な道具を製作することに多大な知力や電力や筋力を費やす必要が出てきます。ほんと、なぜなんでしょうか。
というわけで、最近の道具製作プロジェクトの筆頭であった、タイヤビードブレイカーの登場です。うちの本業である自転車にはあまり関係ないのですが、自動車やモーターサイクルなどのチューブレスタイヤを組み替える際に必要となる工具です。
チューブレスタイヤの断面を見ると、通常最も肉厚があって頑丈なのがビード部分、つまりタイヤにとってはホイールとの唯一の接点となる部分です。ここがへなちょこだと空気が漏れるし、駆動力が滑って逃げるし、しまいには内圧に負けてタイヤが弾けて大事故になりますから、しっかりきっちり嵌っているのが基本です。で、タイヤ交換(夏タイヤとスタッドレスのそれぞれホイール付き別個セットを履き替えるとかじゃなく、減ったタイヤを外して新品に換えるような場合)には、必ずこのビードを落とす必要があります。ホイールの内側には逃げがあるので、外端にピチッと嵌っているタイヤビードを内に落とすわけです。それによって初めて、タイヤレバーを突っ込んだりしながらタイヤとホイールの知恵の輪を解くことができるのです。
余談ですが、ビードをホイールの逃げ(リセス)に落とさないとタイヤが外せないというのはチューブ入りの自転車タイヤでも基本的には同じことです。私も昔はタイヤレバーを曲げたり折ったりしたもんですが、それは単純に知恵の輪が出来ていないだけでした(というか今ではタイヤレバーをほとんど使わなくなりました)。MTBなどのチューブドはチューブレスに比べるとビードのはまりがユルユルなので、知恵の輪が分かっていなくても何とかなっちゃうせいで知識不足に気づかないのもよくある話です。また、一部の国産リムなどでほとんどリセスの無い設計のものがあったりして、変な時代でした。チューブレスだって、リセス無しで脱着できるほど緩いビードだったら一周キレイに座らせるのが難しくなり、タイヤ振れの原因になります。
話は戻ってビードブレイカーですが、まず落としたかったのがスモウローラー用にと思って試しに組んでいたバルーンタイヤです。
単管で枠を組み、その中でジャッキベースを使って押し下げます。これがまた、全然ダメでした。車屋さんが使うタイヤチェンジャー付属のビードブレイカーだと圧迫力が確か2~3トンだと思いますが、力の大きさもさることながら、圧迫の軌跡がきちんとコントロールされていないと力が逃げて失敗するようです。この直前には単管の自在クランプを支点とするテコ型も試しましたが、自在クランプだと片持ち支点と同じ力の逃げ方をするので、これまたダメでした。タイヤやホイールがズタズタに傷ついても良ければオプションは増えるんですけどね。
真っ直ぐ押せるものというと、あれかな? ということでバージョン2です。まず、直交クランプをバラします。今回のプロジェクトには右のHoryのものが良い具合でした。
ちなみにやたらと単管にこだわっていますが、一応理由があります。うちに何本か転がっているし、ってのもひとつですが、ビードブレイカーみたいな骨組みのかさばる道具は分解できるようにしておきたいというのが最大の理由です。で、骨組みやらテコやらに使える強度があって、壊れたらすぐ代わりを買ってこられる部材というと、48.6mm規格の単管が最強なわけです。サビにも強いし。
このへんはメーカーによって違いがありますが、Horyの直交クランプをバラすとこうなります。6mmのリベット4本をドリルで揉んで抜くと、裏に回り止めのポッチが2個とそれを受ける穴が開いています。さすが、頭いい構造ですね。色が変なのは、一応錆止めに亜鉛スプレーを塗ったからです。
バラした直交クランプと組み合わさるように、こんな部材を用意します。
できました! ジャッキの頭形状の都合で直接クランプを付けられず、手間が増えましたが、まあ良いでしょう。タイヤに当たる部分はDIYの良き友、まな板です。曲線が汚く見えるのは、多様なホイールサイズに対応すべくRと直線を組み合わせた贅沢シェイプにしたからです。
レッドロケット号プロジェクト最大の工作となったリアバンパーも、まさか初めてヒッチレシーバーチューブに受け入れるお客さんがビードブレイカーになるとは思いもしなかったでしょう。
しかし。
表側は何とか落ちたものの、リセスまでが遠くて落としづらい裏側はブレイクできず。だいたい、シザージャッキに大した横剛性がある訳がないし。回すのめんどいし。トラックのリアエンドなんて荷重かからないから車体が持ち上がる一方だし。よく考えたら、ひどい構想でした。失敗です。