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Spinner “Cargo 34″ MTBサスペンションフォーク – NSP特別仕様

26インチMTB用サスペンションフォークが入荷しました。

マウンテンバイクの部品規格がかつてない多様化を見せる中、従来規格に則った普通のMTBに装着できる普通の交換部品が無いという困った現象が起きるようになっています。そんな時の選択肢としてNSPがお送りする、普通のMTBフォークがこちらです。

以下、ムダに長い説明をはさみますので、どうでもいい方は写真までスクロールしましょう。

フォークが規格変遷の荒波に激しく揉まれるのには理由があります。他の部品との接点がそれぞれ、規格戦争の激戦地だからです。

まずは上から、フレームに刺さるスティアラーチューブ。スティアリングコラムとも呼ばれます。大昔にはこれが1インチ(25.4mm)という標準規格がありましたが、ここ四半世紀ほどの間にMTB主導で1-1/8インチ(28.575mm)が主流となり、今ではロードだってBMXだってほぼこれです。チューブ先端では。しかし片持ち支持機構としての最適化のため、このチューブの根本、つまりフレームのヘッドチューブ下端の大径化が進んでいます。いわゆるテーパードヘッドチューブです。これはこれでエンジニアリング的な正当性のある話なので私も嫌いではないですが、弊社のタナトスをはじめ、まだまだストレート(上下同径)のフレームはありますし、それが極端に劣るわけでもありません。一方でアフターマーケットのMTBフォークはここ数年で一気にテーパー祭りとなり、ストレートスティアラーのものが入手困難になりました。これが、今回このフォークを特注して仕入れた最大の理由です。

次に問題になるのが、タイヤサイズです。26インチ、29インチ、27.5インチと主流が移り変わる中で、フォークも基本的にはそれぞれのタイヤサイズに対して専用設計となっています。ちなみにホイールサイズを小さい順に並べると26、27.5、29ですが、それぞれの外径差は3センチちょいです。半径では1.5センチ刻みなので、このうち2つのサイズに対応する兼用フォークというのはまあ可能ですが、どれもこれもOKというわけには中々いきません。タイヤサイズについて、私たちは26インチへの愛に溺れていますので、このフォークを用意した第二の理由がここにあります。

次の激戦地は、ブレーキ台座です。昔はリムブレーキ(カンティレバーブレーキ)台座のみだったり、「国際標準(IS)」ディスクブレーキ台座と両方ついていたりもしましたが、今の主流はディスク専用で、ポストマウント(ダイレクトマウント)台座です。設計通りのローターサイズ(このフォークでは160mm)を使う分にはISよりも部品が少なくて済み、性能も整備性も良く、別に20年前のブレーキキャリパーだってそのまま使えたりしますので、ここは普通にナウい構成でいきます。

そしてフォークの下端、ハブとの接合部も問題です。これまでに存在した主な選択肢としては、9mmクイックリリースアクスル、20x110mmスルーアクスル、15x100mmスルーアクスル、15x110mmスルーアクスルがあります。このうち、クイックはまず論外です。これは昔ながらのリジッドフォークで実績のある構造をそのまま持ってきてしまった後方互換の失敗例で、フォークはよじれ放題だし、そのせいでクイックシャフトはグニャグニャに曲がっていき、それじゃあ、とBMXなんかのナット止めハブで乗っていればドロップアウトがちぎれるし、そもそもディスクブレーキの反力が常にホイールをボロっと脱落させて大事故を起こす方向に働く構造だしで、致命的な欠点が多すぎます。一方、スルーアクスル化によりそれらを克服した20×110規格は以降ずっと、軽く20年以上にわたりダウンヒルなどで主流となっており、信頼性も高く比較的優れた(いわゆる「枯れた」)規格です。「じゃあそれを細くしたら軽くなって良いんじゃね?」とどこかの阿呆が考えたのが15×100で、これには検討の価値は無いでしょう。いわゆるBoost規格の15×110も似たようなもので、私の見る限りそこにまともなエンジニアリングはありません。軽負荷用途向けに軽くしたいって言うなら、20×110のままでアクスルの中空度を上げれば(薄肉化すれば)良かったわけですし。「小径アクスルならハブ側でもベアリングを小さくできて軽くなるだろう」と「だろう運転」で突っ走ってますが、現実には多くのハブメーカーは互換ハブで対応しています。つまり、小径アクスル用には両側のスペーサーの形状や肉厚を変えただけです。というわけで、MTBフォークとして持つべき剛性と信頼性、および徒花バズ規格の忌避という観点から、アクスル規格は20x110mmを採用しています。


白か黒か。スティアラー長は(どうせ切るものなので誰も気にしないと思いますが)265mmです。

左レッグにエアスプリング。右レッグはカートリッジダンパー入りで、上にロックアウトダイヤル、下にリバウンドダンピング調整ダイヤル。ロックアウトをコンプレッションダンピング調整っぽく使うこともできなくはないようです。普通は全開で良いと思いますし、私はストリートでも全開のままでちゃんとサスペンションの仕事をしてもらうのが好みですが。それでもエアスプリングなのでボトムでは粘ってくれますし。

信頼の20mmアクスル。ブレーキは標準的なポストマウントです。

装着例。トラベル110mmくらいに短縮した状態です。

出荷状態でトラベルは150mmですが、弊社で用意した短縮化キットが付属します。特製ワッシャーとスリーブの組み合わせにより、最短80mmくらいまで、5段階ほどの調整が可能です。装着方法は別記事で紹介します(けっこう簡単です)。

ひとつ大事な注意点があります。弊社のタナトスフレームに組み合わせることももちろん可能ではあるものの、本来は高剛性が売りのオールマウンテンフリーライドフォークであり、エクストリームフリーライドやダートジャンプには使用するべからず、ということになっています。用途、強度、その他こだわりという面でリビドーバイクカンパニー製品とは方向性が違うものであることはご承知おき下さい。

弊社で2018年春から3本ほどテストしていますが、うち2本はストリートやダートジャンプ、パンプトラック、ミニダウンヒルからノースショア系ミニトレイルまで、気温30℃から-10℃くらいの中でちょいちょい乗ってきて、まだ何の問題もありません。一方、距離4mとかのダブルジャンプをゲシったりしているうちにクラウンが歪んでチョッパーになったケースも1本ありました。現実には壊せないフォークなど無いですが、それでも壊れれば泣きたくなるもの。せめて半泣きで済むよう、お手頃価格でのご提供です。

概要:

  • MTB用サスペンションフォーク
  • エアスプリング
  • 高剛性34mmインナーチューブ
  • 150mmトラベル(短縮化キット付き)
  • 重量: 2.4kg
  • 色: 黒 or 白

各部規格:

  • ホイールサイズ: 26″
  • スティアラー: 1-1/8″(OS)ストレート
  • ハブ: 20/110
  • ディスクブレーキ対応(160mmディスク用ポストマウント)

小売価格(消費税別): 41,800円

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