取り扱いを始めたSpinnerブランドの「Cargo 34」フォークには、当社が独自に手配したストローク変更キットが付属します。
まっさらな状態のCargo 34フォーク。トラベル150mmです。
このようなワッシャーとスリーブを用意しました。以下、装着方法を解説します。今回はフォーク単体で作業していますが、自転車に組み付けて車輪が付いた状態でも可能な、簡単な作業です。
用意するもの
- 六角レンチ(6mm)
- ボックスレンチ(24mm)*モンキーレンチ等でも代用可
- オイル少量(数滴程度、ゴム攻撃性のないフォークオイル等)
まず、エアスプリングの入っている左レッグ先端のボルトを外します。
次にエアバルブキャップを外し、空気を抜きます。
トップキャップを外します。
工具は24mm。がんばれば、モンキーレンチでもまあいけます。
外れたところで、フォークを縮めます。少量のオイルが出てきます。いわゆるフォークオイル(ダンパー油)の役割ではなく、エア室の気密潤滑のための油です。後で組み立て時に補充する必要がありますが、最悪、これを溜めておいて再利用という手もあります。
先端の穴から押して、エアピストンを抜きます。理想を言えば真鍮棒やアルミ棒で先端に芯押しの突起付き…なんて話になりますが、そっと押すだけなんでまあ何でも大丈夫です。ここでは六角レンチでやっていますが、突っ込む前に工具をサッと拭っておくと異物混入のリスクが減って良いでしょう。DIYリテラシーの問題です。
これで、エアピストンが抜けてきます。
抜けたピストン。このコイルばね部分はトップアウトバンパー、つまりボヨーンと伸び切った時の衝撃を和らげるものです。この部分を分厚くすると、伸び切った状態でのフォーク長が短くなります。トラベル短縮の要点はこれだけです。
「もっとスマートに短縮させたい」という強いこだわりと技術のある方のための補足情報。バネの上端(写真右側)はロッドにロールピンで固定されており、実はロッドには元々50mmくらい下側にも予備のピン穴が開けてあります。ですので、ピンポンチでロールピンを打ち抜き、バネ全体を下寄り(写真左側寄り)にずらしてピンを打ち直せば、何も部品を足さずにストローク変更が可能です。道具と技術が多少必要になり、また微調整がきかず戻すのにも手間がかかることから、今回弊社ではスペーサーによる方法を採用しました。
トップアウトバンパーは端面にプラスチック部品をはめ込んであるコイルと、ゴムワッシャーで構成されています。この間にスペーサーを入れます。
一度ゴムワッシャーを抜き、5mmワッシャー2枚を入れた状態。トラベルはわずかに減って140mmほど、コレ自体はあまり需要ないと思います。ただし、以下のいずれのスリーブ組み合わせパターンにおいても、両端には必ずこの5mmワッシャーを入れて下さい。
今度は5+20+5で、30mm短縮するパターン。
そして、5+52+5で、62mmショート。
計算上はトラベル88mmまで減りそうに思えますが、実際には100mmほどになります。なぜなら、エアスプリングの構造上、空気圧によってゼロGでの長さが変わるためです。サスペンションというものは一般にストロークが短いほどバネを固くする(そうしないと底付きする)ものなので、ショートストローク化し、それに合わせたエア圧にすると、フォークの寸法は入れたスペーサーの厚みほどには変わらないのです。
また、これらの付属スリーブを全部入れて82mmショート、最終トラベル80mmあたり狙いというセットアップも不可能ではないですが、それで体重重め(フォーク硬め)の設定だとエア室の圧力が高くなりすぎるケースもありうるので、注意が必要です。別の切り口から言うと、21世紀のマウンテンバイキングにおいて「サスペンションフォークを付けたいが、トラベル100mmは長すぎる」というシチュエーションは基本的に存在しません。ですので「スペーサー全部のっけ」はあまり現実的な選択肢とはならなさそうです。
ゴムワッシャーを再度入れる際には向きに注意が必要です。これを逆向きにしてしまうと、動作中に空気が逃げられず、エアスプリング室とは関係のないところで圧力が発生してヘンな動きになるでしょう。
ちなみに、今回の作業には必要ないですが、もっとバラすと中身はこんな感じです。
おもむろにピストンを戻し、気密潤滑用に適当なオイル(フォークオイルなど、ゴムシールを傷めないもの)を数滴入れてトップキャップも締めたら、サスペンションポンプで空気を入れます。最終的には体重や乗り方によって4から6気圧くらいを目安に調整することになりますが、この時点ではまだ適当で良いです。
下側にあるピストンロッド端部を固定しますが、ここの穴径とボルト径は同じではありません。ですので、この時点でエア圧をかけてロッドがロアーレッグ内部のザグリにきちんと収まるようにし、芯が出ていることを確認してからボルトを締める必要があります。
組み上がり。この例ではスペーサー計62mm入りで、上記のように空気圧によって変わりますが、トラベル大体100mmくらいになります。
あとは試し乗りしながら空気圧を微調整して終了です。最速で2分、おっかなびっくりじっくりやっても30分くらいでできる作業となります。お疲れ様でした!