自転車の乗り方雑多なブログ記事

パンプトラックの乗り方改善!

去る8月末日、赤井川村のパンプトラックに行ってきました。2年前にレッドブルのパンプトラック世界選手権日本予選が開催された場所です。

(技術研究が好きな方は記事の最後まで、どうでもいい方は下の動画だけ見てね)

あの大会は、自転車スポーツ(の中のアクションスポーツ側セクター)における基礎技術の鮮やかな炙り出しであったのみならず、私の自転車人生の中でも大きな転換点となるものでした。トライアルやストリート、それにスラロームやダウンヒルをかじってきた中でそうした技術には一通り定評もあったしそれなりの自信も持っていたのですが、結果としてはコテンパンにやられ、モブキャラ以上の働きは何もできませんでした。井の中の蛙がゴマメの歯ぎしりをしたわけです。

こういう最近大流行のパンプトラックを上手く楽しく速く走るためには、コース上のコブコブを加重抜重により「漕ぐ」ことがキモになります。ブランコを漕ぐのと同じ原理です。また、走る際の体勢として、前後輪とも浮かさない「ベタナメ」、前輪を浮かせる「マニュアル」(和製英語では「ロール」)、両輪とも空中浮揚する「ジャンプ」といったバリエーションがあります。基本的にはスピードが上がるほどマニュアルやジャンプをうまく取り入れる必要があり、またそれがかっこいいのですが、基礎技術がしっかりしていないと、マニュアルしてもとりあえず前輪が浮いているだけ、ジャンプしてもとりあえず飛んでいるだけで、結局ベタナメより遅くなってしまうという諸刃の剣ジレンマが存在します。

2年前の私は、マニュアルしても遅くなるだけでした。去年の私も、ジャンプしたところでタイムロスにつながるだけでした。しかし今回やっと、2年間を費やしてイチからやり直した技術体系に光明が差しました。区間タイムの大雑把な計測ですが、私も、今回誘ってくれて一緒に乗ったサワダクンも、マニュアルやジャンプを取り入れて速くなる要素はあれど決して遅くはならないという結果でした。

やっと、ここまで来ました。本当に感慨深いです。

さあ、技術談義いきましょう。ジャンプについては私もまだツメが甘いので、ひとまずマニュアルについて。

コブでの失速系マニュアルの悪癖って、少なくとも私の周りではけっこう根深い問題です。「投げっぱなしスープレックス」みたいなものなので私はこれを「上げっぱなしマニュアル」と呼んだりしますが、とにかく前輪を上げようとしすぎるのが最大の問題です。そうではなくて、加速のためにコブの背面である下り斜面を蹴れば前輪は上がるので、「上げる量は少なく、蹴りを多く」という意識が肝要です。前輪が上がりきっていると、蹴ったらまくれるだけなので加速できなくなっちゃいますから。むしろコブの頂点を超える際に前輪を低くおさえて、そこから爆蹴りすれば次の頂点までは前輪が浮くよね、というのが正統なアプローチです。

別の視点から言うと、前輪をひたすら上げようとすれば、予備動作のためにコブの手前側上り斜面で加重することになります。これはスピードを殺す動きに他なりません。そうではなく、そこは抜重しないといけません。

もう一つ別の視点で言えば、コブ2つの間をマニュアルするとき、前輪の軌道はその2つの頂点を結ぶ接線上を転がるくらいの位置です。それより下がっても爆蹴りで上げればステキですが、それより上がったらもう蹴れません。

ということで、今回サワダクンが撮ってくれた映像から、キモとなる瞬間をキャプチャしてみました。

Absorb at top

コブ頂点でこれからマニュアルに入ろうというところ。ここまでの軌道(コース自体の飛び出し角度)よりバイクの前輪は下がっています。つまり決して積極的に前を上げようとはしておらず、むしろ下げており、またここまでの上り斜面をできるだけ深く吸収した結果として低い姿勢になっています。ちなみにこのダブルはややステップアップ(上り勾配)気味なので前輪が少し上がりますが、次のダブルは微妙にステップダウン(下り勾配)なのでもっと前輪は下がります。

Extend at bottom

上の状態から、ボトムではここまで蹴りきります。英語では「Triple extension」なんて言いますが、股関節、膝関節、足関節の3箇所全ての同時伸展により最大限の加重をかけています。ここから先の上り斜面は飛び越す勢いで抜重したいので、この時点で地に足が着いていることがとても大事です。理想としては上画像のコブ頂点で0G、その直後からこのボトムまでは2Gくらいの接地面圧ということになるでしょう。

ちなみに、パンプトラックを乗る際「頭の高さが一定」という指標が上手さの目安として言及されるシーンを目にしますが、あれ嘘です。初級者向けには分かりやすい目安として便利なのかも知れませんが、そういう乗り方を目標とするのは間違いだと断言できます。その理由や本当に目指すべき動き方については、物理法則とか、自転車と体のパンタグラフ的な位置関係を考えながら乗り込んでいけば分かることかと思います。

Happy pumping!